1998年に、ボンにいたとき、友人のエーベルハルトにさそってもらって、郊外の小劇場でハントケの『観客罵倒』を観た。登場する俳優は二人だけで、お互いにしゃべりあっていたかと思うと次第に客席に向かって罵詈雑言を吐き始める、そういう「演劇」だ。金属フレームで組まれた5、6段の客席の下に車輪が仕掛けてあって、芝居の途中で黒子が客席全体を前方の壁に向かって押していき、しばらくの間観客はただの壁と向き合わされたり、まあいろいろと時代に合わせて趣向が凝らされていた。周りの観客はすでに心得たもので、罵声をあびせられても、壁とにらめっこさせられても、ひたすらきゃあきゃあ言って愉しんでいる感じで、きっと30倍以上は(ってどういう数字だか分からないが)あったと思われる1960年代末の初演当時のインパクト(途中で憤然と席を立つ観客がいたなどということ)は想像する他なかったが、ともかく面白かった。

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