Herbes - Kräuter: junij 2005アーカイブ

カタカナに移すのであればペヒトランカ。スロヴェニアの、タラゴン入りのロールケーキ。スロヴェニア語でタラゴンは pehtran ペヒトラン。それが入ったロールケーキが pehtranka ペヒトランカ。

スロヴェニアは、スウィーツ (slaščice スラシュチツェ)、ケーキ (pecivo ペツィーヴォ) の類いがまた、実はとてもおいしい。

ロールケーキ(ケーキというより少しパンに近い)は Potica ポティツァと言い、蜂蜜入り、クルミ入りなど、さまざまな種類のレシピがある。その中でも、このペヒトランカがいい。他のポティツァが「〜のポティツァ」と呼ばれるのに対して、このタラゴン入りのものだけは、同様の pehtranova potica という言い方もあるものの、pehtranka というたった一語で言う言葉が存在する。

このペヒトランカを、ボヒンのバカンスアパートに滞在した折、家主のマリヤおばちゃんが作って食べさせてくれたのだった。

タラゴンというと、フランス料理のイメージが強いが、こうしたお菓子に使ってその甘い香りがとてもよく生きているのは、このペヒトランカを措いて僕は知らない。

pehtran.jpg
この画像はここから拝借した。ロシアン・タラゴンだ。このオーストリアのサイトでは、40もの言語でのハーブの呼び名が纏められている(日本語まである)。こういう各国語対照のハーブ名辞典を作りたいなと思っていたのだが、屋上屋を架すところだった。そもそも40言語なんて僕には無理だ。

ふしぎなのは、スロヴェニア語でタラゴンを指すペヒトランという名が、孤立しているように見えることだ。他に似た名で呼ぶ言語がない。お隣のクロアチア語でも、タラゴン、エストラゴンの系統の呼び名しかない。

肝心な(?)ペヒトランカのレシピだが、スロヴェニアのお菓子レシピ本で最も権威があるのが、『シスター・ヴェンデリーナのケーキ』というこの本。カラー図版の美しい大型本。もちろんペヒトランカのレシピも詳しく載っている。詳しすぎて、きちんと日本語にして紹介する余裕と能力が、いま、ない。
Marija Ilc, sestra Vendelina "Pecivo sestre Vendeline" Ljubljana: Vale-Novak, 1995.

英語によるレシピならば、たとえばここで読める。
Slovenia News

また、クルミ入りポティツァのレシピだけだが、ここも英語。タイトルの通り、「スロヴェニア語旅行会話」のサイト。
Slovene for Travelers
オマケとして挙がっている例文が、「(この)ポティツァはすばらしい。」 Potica je izvrstna.

    
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コムナ Komna は、コムナ小屋から西や北に広がる台地の名前で、ボヒンの大きな谷全体のどん詰まりの上部にあたる。コムナ小屋から (13:00) 北に向かって歩いていくコース、右手はそのコムナがボヒンに落ち込む断崖だが、コムナ台地は大きく、コースはしばらく台地の上の大きなゆるやかな谷の中、石灰岩の白色が支配するまばらな樹林の中を小さく上下する。やがて急登があり、道は断崖のすぐ近くに出て、ボヒンの湖の展望が開ける。
bohinj0014s.jpg
この写真はそのあたり。ちょうど、あのサヴィツァ滝の断崖の真上のあたりだ。手前の石灰岩の白さに、後景のはるか下の湖がすっかり暗く沈んでしまっている。ご覧いただきたいのは、石灰岩のわずかなくぼみに花を付けているタイムだ。下の牧草地にタイムやヤロウがふんだんに生えていることは前に触れたが、ことにタイムは、かなりの標高の条件の厳しいところにもよく生えている。そしてまた香りがいい。
フランスのすぐれた料理人は、野や山の中に、とりわけ香りのよい香草の生える「秘密の場所」を持っていて、決して他人には教えないのだ、といった話をどこかで読んだ記憶がある。こういうところに生えているこういうハーブを見ると、そんなこともあるのだろうなと思える。

やがて道は急斜面の下りとなり、一気にČrno jezero(チュルノ・イェーゼロ、黒湖)のある谷に降りていく (14:40)。黒湖は、トリグラウ七湖の一つ。流れ込む川も流れ出す川もない、やはり地下水脈が地上に顔を出していできている小さな湖。水位はそのときどきで著しく変化するが、長さ150m、幅80メートルほど。ここでも、エメラルドの色をした水は透明度が高い。あたりを覆うトウヒの森が水面に黒い影を落としており、それゆえの名前のようだ(これより上の湖の周りには森林はなくなる)。水温はあたりの湖の中では高めで、泳ぐのにちょうどよく、長い歩きでほてった体を冷やしている登山客がときどきいる。
crno_jezero.jpg

ここから北の方に向かって、七湖谷と呼ばれる大きな谷が弓なりにトリグラウ山のほうに続いている。トリグラウへの登山道の一つ、長い長い道だ。この黒湖は七つの湖の一番下。そしてここは、依然、ボヒンの大きな谷のどん詰まりの断崖の上だ。つまりボヒンを取り囲む山々は、その奥、湖の北から西にかけてもっとも急峻な断崖となっているのだが、その断崖の上に、さらに台地や尾根や谷がはるかに連なっている。その端っこにあるのがこの黒湖。

ということはだから、ここからボヒンへの下りもまた、ほとんど断崖のような急な斜面に付けられた道を辿っていくことになる (14:50)。この斜面にはコマルチャ Komarča (梯子)という名が付いている。イドリヤの博物学者 Breton Balthasar Hacquet (1739-1815) は、ここを最も早く訪れた人物の一人だが、登るのが困難な地点の多くで、生えているトウヒの枝を短く落とし、それを梯子のように使って乗り越えたといい、そこからこの斜面も Komarča と呼ばれるようになったのだという。(Peter Skoberne, Triglav National Park. Ljubljana, 1991 による)

とは言え、今現在歩いているかぎり、樹林に覆われたジグザグの、普通の登山道だ。降りきって振り返ったとき、このほとんど垂直に見える壁のどこにあの道があったのだろう、どこを歩いてきたのだろう、と訝ることになる。やがて針葉樹の植林帯に出て、さらに下ると、川の左岸を、ホテル・ズラトロクのあるウカンツ Ukanc からやってくる道に降り立つ(15:55)。出発地のサヴィツァ小屋は、右へ歩いて木橋を渡ればすぐだ。

サヴィツァ小屋から、このときは、夏のみの Turist Bus (16:20) で Polje ポーリェの村へ行き、そこの食堂 "Pristavec" で夕食をとった。この食堂は、いまはない。

    
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