ボヒンは周りをスロヴェニアの最高峰トリグラウをはじめとする高山に囲まれ、本格的な登山(たとえば以前のこのエントリを参照)のベースとなる土地だが、軽いウォーキングのコースにも事欠かない。ボヒンスカ・ビストリツァやリブチェウ・ラースの観光案内所で手に入る Bohinj の一万五千分の一地図は、そういうコースを一ダースほど載せている。
野生のオレガノ (dt: Oregano, slo: origano, dobra misel) の一大群落を見つけて感激したのは、そうしたコースの一つ、ボヒンスカ・ビストリツァからサヴァ・ボヒンカの川沿いを下流に向かって歩き、グルメチツェ滝 slap Grmečice へ向かうコースの途上だった。イタリア料理によく使われるオレガノは、南欧起源ということになっているから、イタリアにも遠くないここでこうして生えていても不思議はないが、現実に群落にぶつかると、嬉しかった。
野生のミント (dt: Minze, slo: meta) の一種を、最初に見つけたのは、カムニェの隣村サヴィツァからボヒンスカ・ビストリツァに向かう車道の脇。ついで、ルードニツァの登山道だった。

ルードニツァ Rudnica は、ボヒンの南の谷と北の谷を隔てる山で、標高946メートル。この山への道も、同じ地図に載っている。カムニェなどのある南の谷は標高500メートル程度だから、標高差はたいしたことはないが、勾配はきつい。下から見上げた斜面は森林と断崖がまじりあって、断崖の一部は激しく崩落したガレ場になっているのが下からも分かる。この南の谷からのルードニツァのコースは、ボヒンに入って、周りの本格的な登山コースに行く前の足慣らしにちょうどいいかもしれない。
カムニェからは、例のよろず屋の前を通って、川沿いの野道(ここでもブラックベリーが摘める)をまっすぐ、となりのサヴィツァ Savica の村まで行き、そこで橋を渡って少し右へ歩くと、2、3軒の民家をはさんで登山口がある。左に向かう林道を離れ、ひたすらまっすぐ急な登山道を登っていくと、やがて左に折れて、ガレ場を渡る。上のミントの写真はこのあたり。このあとは山陵直下の10メートルもない断崖を右に見ながら、ゆるく左に巻いていくことになる。広葉樹林の中の歩き。そのちょっと暗い道が尽きて、稜線上の小さな明るい牧草地に飛び出したとき、息を呑む。まだ刈り取りが終わっていなければ、赤、青、紫、黄色のとりどりの花、その向こうにぽっかりと浮かぶ、最高峰トリグラウの白い姿。稜線上のコルにあたるこの牧草地のこの光景には、初めて訪れたとき、心底ゆさぶられたのを覚えている。
道はそこから東に向かって樹林のゆるやかな稜線上をたどる。右手は先ほど下を歩いてきた断崖だ。この尾根には Široka polica シローカ・ポリツァ (「広い棚」)という名前がついている。10数分で、もう一つの牧草地の作業小屋の脇を通って、北にむかって一登りすると、ルードニツァの山頂だ。樹林の中だが、東面は断崖で、眼下にセノジェータの牧草地、その向こうに南北ボヒンを隔てるもう一つの山、シャウニツァ Šavnica が見える。
復路は往路を戻ってもいいし、稜線上の牧草地から北の谷のスターラ・フジーナ Stara Fužina へ降りてもいい。





