ボンナー・シンフォニエッタは消滅していたから、オケは前に書いたようにもっぱら大学オケで楽しんだが、トーマスとその仲間たち(きかんしゃではない)とは、トーマスの家でときどき室内楽をやった。
今度のトーマスの家は、ボンの中心から市電=地下鉄で30分ほど、その終点、ライン対岸のバート・ホネフにあった。小さな町だが、ビルケンシュトックのおかげで今や日本でも少し知られた名になっているのかもしれない。あのサンダル会社の本拠地なのだ。98年はしかしまだ爆発的に売れ出す前で、そんな会社があることすら、全然目に立たなかった。一応バートというのだから保養地で、ヴァカンス向けのホテルもある。ライン河畔のニース、というのはちと僭称が過ぎるのではないかと思うが、ボンのすぐ近くでありながら、ゆったりとした時間が流れている気がする。
トーマスの家は、その町はずれの、ラインの河畔はすぐそこの、小さな3階建ての、ちょっと変わったウチだった。




