German Cinemaの最近のブログ記事

太陽に恋して何のブログなんだか訳が分からなくなっているこのブログ、もとはと言えば、日本で公開されていなかったりあまり知られていないドイツ映画の紹介から始めたのだった。

わりあい初めの頃に紹介した一つがアキン監督の Im Juli。ドイツ版の DVD で見て気に入り、学生たちにも薦めてきた。台本が出版されていないので、一部のシーンの台詞を自分で必死に聞き取り、プリントして、読ませたこともある。ロードムービーと、メルヘンと、ドタバタ・ラブコメディーを合わせたような作品。

その後、たぶんアキンが『愛よりも速く』Gegen die Wand でベルリナーレの金熊賞を受賞してから・したからだったと思うが、この Im Juli も、たぶん東京でだけ、日本語字幕付きで上映されたという話は耳にしていた。それが、昨年の秋に、日本版 DVD 『太陽に恋して』として出ていたことを、つい最近、学生から知らされた。どうやらそこらじゅうの TSUTAYA に置いてある。早速借り出して観てみた。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!


lola_tolar.jpg
Lola rennt
最近復活した The Glory of Carniola に出ていた記事。Run, Tolar, Run。何回も観たはずなのに、これは僕も気がつかなかった。1998年のドイツ映画で、かなりヒットした『ラン・ローラ・ラン』 Lola rennt の中に、スロヴェニアのトラル札を拡大した画像が出ていたのだ。その「第二ラウンド」で、ローラが父親を人質に銀行の現金出納窓口に入り込んで10万マルクを要求するシーン。その窓口後方の壁に、大きく引き伸ばされた100トラル札の画像が掲げられているのだった。なんで?

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

Kammerflimmern DVD←クリックで amazon.de へ

冒頭、楽しげな家族でのドライブが一転して悲劇と化す。この設定はキエシロフスキの『青の愛』にちょっと似るが、ここでは7歳のパウルが両親を失う。
26歳のパウルは救急士助手になっている。「本人がまるで事故みたいな奴だから」、同僚からはもっぱらクラッシュというあだ名で呼ばれている。日々、ケルンの街のさまざまな事故に出動しては、人の命を救い、窮境にある人を助け、あるいは慰める。さまざまな出動のエピソードが丁寧に、しかしバランスを失することなく描き込まれる。そこに描かれるのは、言わばまさしく「剥き出しの」生であり死だ。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!



DVDのカバーを見て、映画を見始めてから、まず、やられた、と思った。タイトルは「アグネスと〈彼の〉兄弟」となっているではないか。つまりアグネスというのは性同一性障害の男で、これは三兄弟の物語なのだ。このトリックにはドイツ人たちも案外引っかかっているらしく、ボーナス・マテリアルに収められた街頭インタビューでこの映画のタイトルを言わされた人の多く(もちろんまだ観ていなかった人たちだろう)は、「アグネスと彼女の兄弟」と答えていた。政界で活躍するヴェルナー、図書館の司書のハンス=イェルク、いまはダンサーのアグネスの三兄弟。それぞれにぶっ壊れた人生を抱えている。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

ハンブルクの下町、キーツ。イーボは当地生まれのトルコ人。ブルース・リーの熱狂的なファンで(またブルース・リーだ)、ドイツ初のカンフー映画の製作を夢見ている。叔父のインビスのために作った宣伝スポットフィルムが評判になり、店には客が詰めかけ、イーボは一夜にして地元のスターになる。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

Vom Suchen und Finden der Liebe

タイトルを「直訳」すれば、「愛を求め、見つけることについて」。かなり特異な仕立ての恋愛コメディ。作曲家ミミ(モーリツ・ブライプトロイ)と、歌手ヴェーヌス(アレクサンドラ・マリア・ラーラ)の、熱愛と破局、冥界での和解と悲(喜)劇的な結末へとたどっていく物語。オペラでもドラマでも史上再三リサイクルされているオルフェウスとエウリディーケの物語を下敷きにしている。脚本は監督のヘルムート・ディートル自身と、小説『香水―ある人殺しの物語』やモノローグドラマ『コントラバス』で知られる巧者の作家、パトリック・ズュースキント。105分。このドイツ版DVDには字幕は一切ないが、後述のように脚本は容易に手に入る。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

ドイツ映画『グッバイ、レーニン!』では、コカ・コーラが当時の東から見た「西側資本主義」を象徴するものとして、効果的に使われていた。大小のコカコーラのトラックが左から右に走っていく背後で、衛兵が交替する。その、「交替! Ablösung!」という号令が、体制の交替に重ね合わされていた。
主人公アレックスの母親は、心臓発作で昏睡に陥っていて壁が崩壊したことを知らない。目覚めてからも、ショックを与えてはいけないから、母親にはあくまでも東ドイツが存続していると思わせておこうとする。ところが、よりによって母親の病室の窓の向こうに、コカコーラの巨大な宣伝幕が掲げられる。アレックスは、ビデオ編集に凝っている友人とニセのテレビニュースをでっちあげて見せる。そのインチキニュースで、友人演じるアナウンサーが、「コーラは50年代(だったかな?)の東側の発明であって、それを勝手に盗んで造っていたコカコーラ社が、そのことを認め、東ドイツで共同で生産することになった」といった説明をする。それに対する母親の反応、「あら、コーラは戦前からあったわよ?」という疑問符つきの指摘は無視される。

日本版DVD はこちら:

"グッバイ、レーニン!" (ヴォルフガング・ベッカー)

『グッバイ、レーニン!』には、「コーラ代わり」の飲み物の話はたしか出てこない。でも、またハントケの『反復』の話だが、そこには、主人公の少年が、夜、イェセニツェ(スロヴェニア北西部、オーストリア国境)の駅の食堂で「当時のユーゴスラヴィアでコカコーラ代わりだった黒っぽく甘い飲み物のビン」を前に、一人、座っているシーンがある。1960年のことだ。

この一節を読んだのは1990年代はじめのことで、それ以来、スロヴェニアには何度も来ているけれど、気がつかず、今回初めて目に付いて、これかな、と思ったのがこのコクタ Cockta。体制の転換後、つまり独立後、しばらく市場から消えていて、復活したのかもしれない。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

2003年、ドイツ、135分。Margarethe von Trotta 監督。

ニューヨークに住むルート・ヴァインシュタインは、夫を失ったばかり。ことさらにユダヤ教の教義を守って、親族に30日間の喪を強いる。ルイスと結婚したいという娘ハンナの希望は撥ね付ける。なぜそこまでするのか、過去については黙して語らない母がくぐりぬけてきた時代を知るために、ハンナはベルリンに飛ぶ。そこで会った90歳のレーナ・フィッシャー、戦中、母の養母であった人物の口から、ようやくハンナは過去の事実を聞き出す。それは1943年2月のことだった...。

という枠物語形式で語られる第二次大戦中のドイツの物語。

スターリングラードでのドイツの大敗後の1943年2月、ベルリン。ユダヤ人の夫をもつ数百人の女性たちがローゼンシュトラーセ( Rosenstraße 薔薇通り)で大胆にもデモを行い、収容所に送られようとしている夫を返してくれ、と訴える。もともとこの通りにはユダヤ人コミュニティの本部があり、それを接収したナチは、そのままユダヤ人たちの仮収容所にしたのだった。さらに驚くべきことに、彼女らの訴えは成功を収める。夫たちは帰ってきたのだ。

この史実を舞台に、個々の登場人物はまったくフィクションとして創造することで、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督・脚本の "Rosenstraße" は、この出来事を目に見える・分かりやすい (anschaulich) かたちで見せてくれる。

Rosenstraße

いくらかの批判や疑義もある。たとえば史実との関係については、ゲッベルスはこのローゼンシュトラーセのユダヤ人たちを(映画のように)どうこうできる立場にはなかったはずだ、とか。あるいはナチはあまりにナチらしく、プロイセン貴族(レーナの父親)はあまりにプロイセン貴族らしく、要するに紋切り型に描かれている、とか。あるいはまた枠物語仕立てにしたことによって、進行も人物の心理も無用に複雑になってしまっている、とか。尻馬に乗って、レーナの夫、ヴァイオリニストのファビアン (Martin Feifel) がヴァイオリンを弾く(フランクのヴァイオリンソナタ!)姿(特に右手)がまったくサマになっていない、とも付け加えておこうか。

しかしセットもカメラも巧みだし、キャストには名優を揃えているし。戦中のレーナを演じるカーチャ・リーマン Katja Riemann は、この映画でヴェネツィア映画祭の Coppa Volpi を獲得している。ハンナを演じるのはマリア・シュラーダー Maria Schrader。モーリツ・ブライプトロイ以上に、この人の多彩な役作り、演じ分けには感心する。『愛され作戦 Keiner liebt mich』のファニー・フィンク役、"Stille Nacht" のユリア役、『コマーシャル・マン』のヨハンナ役、『エーミールと探偵たち』のフンメル牧師役。『エーミール』でコミカルな役を演じていたシュラーダーとユルゲン・フォーゲル Jürgen Vogel が、"Rosenstraße" でも揃ってシリアスな役を演じているのを見比べるのも面白いかもしれない。

全体としてよくできているのは確かだし、またローゼンシュトラーセの出来事を目に見えるものにした功績も疑いえない(これを素材とした映画は先行作品があったようだが)。

映画を離れて、歴史的なローゼンシュトラーセについて言えば、Le Monde diplomatique の記事 Ces femmes courageuses de la Rosenstrasse で Dominique Vidal が書いているように、このローゼンシュトラーセの出来事は、まず、ナチ政権に対して受け身の姿勢をとり、「どうしようもなかったのだ」と言ってきた人々に対して、仮借のない疑問符を突きつける。さらに、この43年の出来事に限らぬ一般的な問題として、ナチ政権は、これまでの歴史研究で想定されてきた以上に、実は民衆を恐れていたのではないか、という問いを提起する。このことは、やはり Le Monde diplomatique で抜粋が紹介されている→日本語版) Götz Aly の近著 "Hitlers Volkstaat. Raub, Rassenkrieg und Nationaler Sozialismus" に言う、ナチスが国民の支持をいかに「金で買う」ことに腐心していた(ユダヤ人や占領国から収奪した富を「福利厚生」に回していた)かという指摘とも平仄が合う。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!


『一家に一つ、魔法使い』 Der Fakir (2004年、85分)

こども向けのホラー・コメディ。(上の日本語タイトルは適当に付けた仮のもの。)
父親が亡くなって、二卵性双生児のエマとトムは、母親とともに、何十年も放置されていた古い屋敷に引っ越す。ここには絶対何かが「出る」と確信したエマは、実際、地下室で、ボールペンに閉じこめられた幽霊というか魔法使いというか何というか、ロンバルドという男を発見する。ロンバルドは、50年の間、そこに閉じこめられていたのだった。ボールペンから出してもらったロンバルドは早速力を発揮しなければならない。この屋敷に盗品のダイヤを隠した脱獄囚二人が闖入してきたからだ。ロンバルドの力を借りて(?)、子供たちは二人の男を見事撃退。それどころかおまけに...。

ドイツ製のこの手のコメディというのはあまり日本には知られていない。このへんは紹介されてもいいのではないだろうか。大ヒットにはならないだろうけれど。

それにしても、ロンバルドを演じるモーリツ・ブライプトロイのはまっていること。『ラン・ローラ・ラン』、『ソリーノ』、『七月』、『エス』などなど、まるで違った役を実に器用にこなすものだ。

原作の少年少女向け小説は

Ein Fakir für alle Fälle



『弟が犬になっちゃった』 Mein Bruder ist ein Hund (2004年、97分)

Der Fakir と一緒にドイツ版 DVD を取り寄せて観てから気付いたのだが、「ドイツ年」のからみで6月に東京で公開されていて、テレビの動物番組でも、「主演」の犬が訓練士と一緒に紹介されていた。(訓練士は、映画の中でもキャンディー・ショップの店員の役で一瞬出演している。)

マリエッタは犬が飼いたくて仕方がない。けれど、親は許してくれない。十歳の誕生日にもらったアフリカの「魔法の石」。魔法なんて効くわけないじゃない。でも両親が旅行で不在の間に、ほんの試しに「魔法の石」に願いをかけてみる。「ベク・ベク・ヴェズ・クサラート!」バカな弟なんかより、犬が欲しい! すると本当にかわいい犬が出現! しかしこの犬、弟トビアスの好物のキャラメルキャンディーをぱくぱく食べるし、弟の大好きだったソファーのクッションにちょこんと座って弟の大好きだったテレビ番組を見ている。弟が変身しちゃったんだ! さらにこの犬、ふとしたきっかけでCMスターになってしまう。マリエッタは必死で弟を元の姿に戻そうとするが、弟の方は犬としての生活がまんざらでもなく、人間に戻ることを拒む......。ドイツ年サイトの解説によれば、「『競走豚ルディー』など、動物を使ったファミリー・ムーヴィーの第一人者であるペーター・ティムによる、<家族の絆>をテーマとする子供向け映画の秀作。」だそうだ。

弟の Hans Laurin Beyerling ? が、彼が変身するツヴェルクシュナウツァーによく似ていて(?)、その点、なんだか説得力がある。

フィルム・タイ・インの、これはおそらくノヴェライズ本。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

18歳のヤーコプ (Tom Schilling) と、ポーランド人のオペアガール、ヴァンダ (Alicja Bachleda-Curuś) との間の、ドイツ映画にしては拍子抜けするぐらいフツーの恋愛ドラマ。奇をてらわず、丁寧に作られていると言うこともできるだろう。最後は抑制の効いたハッピーエンド。安心して見られます。いや、恋に恋しているぐらいの年頃の子たちにはちょうどいいかもしれない。ミヒャエル・グートマン監督。約90分。聴覚障害者のためのドイツ語字幕付き。

前に紹介した Lichter はドイツとポーランドの国境の二つの町、スルビチェと、フランクフルト・アン・デア・オーダーのちょっと哀しい話だった。Herz im Kopf はフランクフルト・アム・マインが舞台だが、ヒロインはポーランド人。

少し話が逸れるが、今年は『日本におけるドイツ』年だそうで、さまざまなイベントが行われている。ドイツ人たちにとっては、この4月30日に両国大統領が出席してオープニングが行われたという「ドイツ-ポーランド」年のほうが、まだ意味がありそうだ。なにしろお隣さんだし。(イラク攻撃への対応の違いから少々齟齬が生じていた両国関係を、良好なものにしていくという意味も、このイベントは持たされているらしい。)

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!
エーミールと探偵たち
松竹 (2003/12/25)
売り上げランキング: 5,897
通常4日間以内に発送

この blog の "German Cinema" カテゴリーでは、日本では未公開のドイツ映画ばかりを紹介してきたのだけれど、2003年のこれは国内DVD既発売。三度めの映画化だ。
ケストナーの名作を換骨奪胎して、うまく仕上げている。今どきのドイツのガキどもにいかにも受けそうな飾りやくすぐりや演出。ベルリンの子供たちの中心にいるのはグスタフではなくて女の子のポニー。ポニーの口笛にこどもたちが集まってくるシーンにはラップ。ラップは、今のドイツのこどもたちには受けがいい。こんな DVD が爆発的に売れているくらいだ。

最初2回(1931年と1954年)の映画化作品は、このDVD一枚に収められている。
B00008DME9.03._SCTZZZZZZZ_.jpg

1931年のウーファの白黒映画は当然ながら原作に一番忠実。1954年のシュテンムレ監督作品、そし2003年のブーフ(ブッフではない!)監督作品へと、少しずつ原作から離れた脚色や設定が大きくなっていく。それでも3作品ともまぎれもなくケストナーの『エーミールと探偵たち』であり得ている。何が変わって、何が変わらないかに着目するのも面白かろう。

ベルリンを象徴する風景の違いも面白い。54年版では、第二次大戦の傷跡の象徴であるカイザー・ヴィルヘルム教会。03年版では、東西統一によって再び通行可能となったブランデンブルク門。

注目すべきは、最初の映画作品のスクリプトをビリー・ワイルダーが書いていることかもしれない。ハリウッドに行く前の ヴィルダー(Wilder)。その名前は、54年版にもクレジットされている。新聞記者をやっていた Wilder が映画のスクリプトに手を染めたのは29年。33年にはナチスを避けてアメリカに渡ってしまうのだから、このわずかな時期にエーミールが製作されたことは僥倖と言うべきなのかもしれない。

2003年版では、エーミールは母親ではなく父親と二人暮らし。しかも現代ドイツの離婚率の高さを反映して、母親が家を出て行ってしまったことになっている。ポニーの両親も離婚の危機にあり、グスタフの母親であり、夫と死別した女性牧師が、最後にはどうやらエーミールの父親と仲良くなっている。(原作にはないこの牧師、『愛され作戦』Stille Nacht で好演していたマリア・シュラーダーがとてもいい。)

この物語を起動させるには、まず最初に優等生のエーミールが警察を恐れるようになるエピソードを置かなければならない。これもそれぞれ。1931年版は原作にほぼ同じ。1954年版では海賊ごっこをやっている子供たちの仲間になったエーミールが仲間とともに、捕えられたアザラシを海に逃がす。2003年版では、古着/古靴泥棒。これは日本の観客には説明が必要かもしれない。ドイツの街角には、いわゆる途上国へ送る古着、古靴を集めるコンテナがある。2003年のエーミールは、お前の格好はベルリンみたいな都会に行くにはダサすぎる、と友人に言われて、この友人とともに、古着古靴コンテナをこじ開ける悪事に加担するのだ。

31年版、54年版についてもう一つ必要かもしれない注釈は、かつてのドイツのホテルのトイレ。かつてのドイツの安宿ではトイレは共用で、"00" という「部屋」番号がついていた。"00"という名前のトイレ用洗剤もある。

悪党グルントアイスを警察に引き渡したあとの後日談もそれぞれだ。なぜかエーミールたちが警察のスポーツ大会に招待されることになって一番冗長なのが1954年のエーミール。一番しっくり来るのが友人たちとの再会をプレゼントされる2003年版。これはポニーを「探偵たち」の中心に据えたことが効いている。
エーミールとこどもたちの集団が悪党を追いつめていくシーンが一番迫力を持っているのも最新のフランツィスカ・ブーフ作品ではないだろうか。

2003年版の主演の二人、エーミールのトビアス・レツラフとポニーのアーニャ・ゾマーヴィラは、DVDに収録されたインタビューで、ほっとするほど素直に、こどもは団結することが大事なんだ、と言っている。監督のフランツィスカ・ブーフは、ちょっと醒めていて、こどもがあんなふうに団結することなんてありえない、でもこの物語のああいう状況をみて、自意識を強めるだろう、と言う。

映画はいずれも名作だが、三番煎じのブーフの2003年作品がとてもいい。

原作のペーパーバック版:

原作の朗読CD:

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

2002年。 "Crazy" などの作品で知られる Hans-Christian Schmid 監督。

lichter.jpg


国境の川、オーダー。その川を挟んで向かい合うポーランドの町スルビチェと、ドイツの町フランクフルト。(フランクフルトといっても、ドイツ経済の一中心地フランクフルト・アム・マインではなく、田舎町のフランクフルト・アン・デア・オーダーだ。)
そういう舞台での二日間。そこで、いくつもの人生が交錯する。夢と挫折、遠い愛と裏切り、だまし、だまされる人々、ひたすら信ずる人々。

ウクライナからやってきて、乳飲み子を抱えてドイツに密入国しようとするコーリャ、アンナ、ディミトリたち。仲介業者のトラックでベルリンまで運ばれるはずが、降ろされたところはスルビチェだった。
コーリャの密入国を助けようとして裏切られるフランクフルトの出入国管理所の通訳、ソーニャ。
フランクフルトでマットレスの店を経営するインゴ。商売はうまくいかず、破産寸前だ。
ポーランドから安いタバコを密輸しているアンドレアスたちドイツ側の若者のグループ。
娘の堅信礼のドレスを買うため夜通し働くスルビチェのタクシー運転手、アントーニ。
その妻もインゴの店で働いていたのだが、賃金は出ない。

とても知的に巧みに組み立てられた作品。と言っても、シュミットにはクヴァベックのように感じる能力が欠如しているわけではない。あえてする抑制の効いた姿勢なのだ。非常にすぐれた作品だと思う。ただし、様々な人生が断片的に描かれながら次第に絡み合っていく構成からして、ドイツ語初心者向きではない。日本で公開するには、よほど巧みな字幕が必要だろう。

『クッバイ、レーニン!』で主人公の姉を演じていたマリア・ジーモンが、見事にソーニャを演じている。アントーニはキェシロフスキ映画のいくつも、とりわけ『白の愛』で名演していたズビグニェフ・ザマホフスキ。野心的で俗物の建築家に、『ラン・ローラ・ラン』でローラの父親を演じていたヘルベルト・クナウプ。

この項はいずれ加筆します。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

このweblogの "German Cinema" というカテゴリーでは、まだ日本では公開されていないドイツ映画を中心に紹介している。ドイツ版の DVD なら手に入るという作品がほとんどだ。amazon.de は、CD-ROM 類は国外に売ってくれないが、音楽 CD や映画の DVD なら OK。

In Partnerschaft mit Amazon.de


日本国内で発売になったドイツ映画の DVD については、こちらが充実している。
ドイツ映画/ドイツ語映画データベース
僕にとっても、へえ、こんなの日本国内で出ていたんだ、という DVD がたくさん紹介されている。
あるいはここ。やはり日本版が出ているものが中心。
ドイツ映画情報
非常に丹念に集められている。ただし、固有名詞などのカタカナへの音訳には少し変なところがある。

海外版の DVD について、ここで念のために記しておくと、市販 DVD には、まず映像方式で NTSC と PAL の二つがある。NTSC は日本やアメリカ、PALはヨーロッパなどだ。この違いはVHSのときからある。ビデオテープは、アメリカで販売されているものは日本のプレイヤーで見られるけれど、ヨーロッパで販売されているビデオテープを日本の通常のビデオデッキで見ることはできない。

DVD には、この映像方式の違いに加えて、地域(リージョン)コードなる厄介なものが加わる。世界をいくつかのゾーンに分け、それぞれの地域に番号を割り振り、その番号が DVD ソフトと、DVDプレイヤーで一致しないと再生できないのだ。アメリカの地域コードは1、日本やヨーロッパの地域コードは2。地域コード1のDVDは、地域コード2のDVDプレイヤーでは再生できない。

そういうわけで、アメリカの DVD は映像方式は NTSC である点は○だけれど、地域コードが1だから結局×。
ヨーロッパの DVD は、地域コードはありがたいことに日本と同じ2で○だけれど、映像方式が PAL だから×。

つまりどちらも通常の日本国内向け家電DVDプレイヤーでは見られない。

では抜け道はないのか、というとそんなことはない。少なくともヨーロッパの DVD に関しては。

PAL だろうと NTSC だろうと、地域コードがなんだろうと見られてしまうプレイヤーも、ネット上で堂々と売られているのだが、ここでは紹介できない。それは置いておいて、実は DVD ドライブのついた Mac や PC では、PAL だろうが NTSC だろうが関係なく見ることができる。問題は地域コードだが、上記のように、ヨーロッパと日本の地域コードは同じ2だから、何ら差し支えない。地域コードが2とは違ったらどうかというと(PC の事情はよく知らないが)、Mac の場合、5回までは切り替えて使うことができるようになっている。それ以降は切り替えることはできなくなる。だから、日本国内で購入した Mac でも、地域コードを1専用にしてしまって、それでアメリカの DVD を見るということは可能なわけだ。そして、繰り返しになるが、ヨーロッパの DVD に限るなら、Mac 上で観るぶんには何の問題もないのだ。12インチの PowerBook では映画を観るには小さすぎる、というのなら、PowerBook を手持ちのテレビに繋げばいい。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

今朝の毎日新聞は、11面にわたって「日本におけるドイツ年 2005-2006」の特集を組んでいる。その第1面に久米宏のコメントがあって、この映画に触れている。(「ベル〈リ〉ンの奇跡」となっているのはおそらく編集側の勘違いだろう。)近々日本でも公開されるらしい。

昨年のベルリン映画祭でファティフ・アキンの『壁に向かって』が金熊賞を取ったとき、銀熊賞になったのが、ゼンケ・ヴォルトマン監督の『ベルンの奇跡』 "Das Wunder von Bern" だった。

das_wunder_von_bern.jpg←ドイツ語版DVD。PAL方式なので、日本の家電DVDプレイヤーでは再生できない。

1954年、スイスのベルンで行われたワールドカップで、西ドイツが奇跡的な逆転優勝を果たした実話に基づいた物語。
久米宏が言っているように、「サッカーファン必見」、サッカーファンにはたまらない、のだろうけれど、映画的にはたいした作品だとは思えない。10年間ソ連に抑留されていて、ようやく帰還してきた父親と、その息子の物語が絡められているのだが、なんとも中途半端に終わっている。父親役のペーター・ローマイヤーに顔つきが似ているだけで採用されたのではないかと思われる子役のルイス・クラムロートにまるで魅力がないのも致命的だ。とってつけたような紅一点である記者の妻の役、カタリーナ・ヴァッカーナーゲルもまるで浮いている(まったく必然性のない、ドラえもん的サービスカット?の入浴シーンまである。B級作品の証し)。

強いて言えば、「戦後ドイツ」の状況や空気を伝えることには、ある程度成功しているようだ。重苦しく辛い時代状況のなかで、この54年のワールドカップ優勝がどれほどドイツ人たちを高揚させたかということも理解できる。

しかし、これが銀熊賞を受賞し、観客動員数も相当なものだったということは、なんと言っても一つのことを示していると思う。ドイツ人はサッカーが好きだ、ということだ。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

solino.jpg
Solino
←ドイツ語版DVD。PAL方式なので、日本の家電DVDプレイヤーでは再生できない。

ファティフ・アキン作品紹介の続き。

1964年、アマート一家は故郷の南イタリアの田舎町ソリーノを離れ、北ドイツ(ルール工業地帯のデュースブルク)に移住する。製鉄と炭坑と雪(!)のある町。だがパスタは? ピッツァは? そこで一家はルール地方最初のピッツェリアを開いて大当たりする。母親のローザ(アントネッラ・アッティーリ)が必死で料理し、父親のロマーノ(ジジ・サヴォイア)が女性客に鼻の下を長くしているうちに、二人の息子たちジャンカルロ(モーリツ・ブライプトロイ)とジジ(バーナビー・メチュラット)は同じ女の子(ヨー:パトリツィア・ツィオルコウスカ)を愛するようになる。ジャンカルロはいかがわしい仲間と遊び歩き、ジジは映画製作を志すが、ロマーノは理解しようとしない。10年後、ローザは疲れ果て、家族は壊れ、ジャンカルロとジジの兄弟も不和となる。さらに10年後、二人がソリーノで再会したとき、それぞれの人生はどうなっていたか…。

2002年の本作 "Solino“ はアキンが初めて自作脚本ではなく、他人(Ruth Toma)の物語の映画化を試みたもの。イタリアからの移民一家の物語は、自身トルコ系移民の子であるアキンには思い入れ深いものがあったようで、しっとりとした佳品に仕上がっている。繰り返し見たくなる映画の一つ。

台本も演出もいいからということもあるだろうが、俳優たちがみんなうまい。両親役のアッティーリとサヴォイアも、中心となるジャンカルロとジジの兄弟を演じるブライプトロイとメチュラットもいいし、何よりその少年時代を演じるミケーレ・ラニエリと、特にニコラ・クトゥリネッリがいい(『ベルンの奇跡』のクラムロートとはえらい違いだ)。ヨーを演じるツィオルコウスカもうまいし、アーダを演じるティツィアーナ・ロダートもとても魅力的だ。いや、写真屋のクラウゼンさんを演じるヘルマン・ラウゼだって、ジジあこがれの映画監督バルディを演じるヴィンチェント・スキアヴェッリだっていい。つまり(アキン映画ではいつもそうだけれど)キャスティングにも隙がないのだ。

LINKS
映画 Solino 公式ホームページ。(ドイツ語)
映画 Solino についてのファティフ・アキンへのインタビュー(ドイツ語)
映画 Solino の紹介と批評。詳しい梗概もあり。(ドイツ語)
映画 Solino の紹介と批評。(英語)
映画 Solino を素材にした Goethe-Institut のドイツ語学習ページ

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!