六甲はつまらないと言えばつまらない。水はきたないし、稜線には車が走りまくっているし。関西で最も手近で山らしい山と言えば比良だろう。というわけで、8月10日、快晴の日曜日、子供二人と比良の武奈ヶ岳山麓の八ツ淵の滝へ。いや、ほんとうは武奈ヶ岳まで登るはずだったのだが...。
7時25分JR西宮駅発、尼崎で快速に乗り換え、あとは直通で8時55分、湖西線の近江高島着。殺風景な中にガリバーの巨大な像が立つ近江高島駅前からは9:03と10:23発のたった2本、ガリバー旅行村行きバスがある。その9:03発に乗る。日曜日でもあり、老(若)男女の登山客が多くて、通常のミニバスに加え、同時刻発のガリバー村行き臨時直行バスが出た。その直行バスに乗る。
バスを降りてすぐのブースで入山料一人300円を払う。そこから舗装道路を少し上がるとガリバー村の正門で、駐車場には多くの車が停められていて、脇に売店がある。売店では、旅行村の宿泊客向けに、ちょっとした食品や洗剤やフリスビーなどを売っている。そこで持参し忘れたライターを買う。そこから左手にミニ天文台を見て、山道に入る。このあたり、ガリバー村利用者のための遊歩道が何本か出ている。
八淵の滝は、魚止めの滝、障子の滝、唐戸の滝、大擂鉢、小擂鉢、屏風の滝、貴船の滝、七遍返しの滝の総称。日本の滝100選にも選ばれているのだそうだ。ここが詳細な遡行図を掲げてくださっていて、それをプリントして持参した。遊歩道をそのまま大擂鉢まで行けばよかったのだが、最初の魚止めの滝で沢に降りた。それが失敗。ここから障子の滝までが、思いがけずかなりの難所だった。
ばしゃばしゃ水に入れる装備であればさほどでもないところも多かったかと思う。でもぼくらはふつうの軽登山靴履きで、あまり濡れたくはなかった。おまけに丈足らずの子供連れ。それだけでコース取りがずっと難しくなる。魚止めの滝は左岸に渡り、右側から越えるのだが、渡ること自体は(水量にもよるだろうが)さほど難しくなくても、左岸に取りつくには大岩を上から回らなければならなかった。そのあとのルート探しも決して容易ではなかった。
障子の滝上部は、石伝いに右岸に渡り、そこから垂直の壁の溝を、鎖と、壁に打ち込まれた黄色いコの字型のステップを頼りに登って行く。これは普通の山歩きのレベルとは隔絶したスリルがある。長男はどうにかすいすい登っていった。しばらく待たせて次男にもゴーサインを出す。一度、5,6メートル上(いや、もっとあったかも)の岩壁で、次男が足を滑らせ、片足が宙に舞うのが見えてひやりとする。なんとか安全なところまで登ったのを見極めて、自分も登り出す。岩壁を登り詰めると、そこからは少しもろい岩の斜面の急登しばしで遊歩道に出る。出たところには、ここからの下りは禁止の標識があった。こういう岩場の下りは登りの何倍も難しい。ここまでで2時間費やしており、この時点で山頂まで行くのは無理だと判断する。
沢登りの経験のない方や子供連れの方には、くれぐれも魚止めの滝〜障子の滝部分には入らないよう警告しておきたい。この部分はパスしてまっすぐ大擂鉢に向かうべきだ。大擂鉢から上も鎖場や梯があるが、障子の滝のところほどの壁はないし、道は決まっていて、沢の中でコース取りに頭を悩ませるところもない。
武奈ヶ岳は、かつてはイン谷口からリフトとゴンドラを利用して比較的容易に入山できた。それが数年前に上のスキー場とともに廃止されて、それで八淵の滝からのコースがクローズアップされてきた気配がある。そのために、このコースの(一部の)難しさについて、一般向けのガイドブックで徹底していない部分があるように思う。子供連れの場合は特に気をつけた方がよい。
遊歩道を少し歩いて大擂鉢まで行く。大擂鉢は、直径10メートルほどだろうか、大きな池状の滝壺だ。ここで昼食。子どもたちは靴を脱いで中に入って遊ぶ。ここだけが目的なら、水着を持参してもよかっただろう。
ここから少し上の屏風の滝、貴船の滝まで往復したが、屏風の滝の下はそれなりの深さと、かなりの奥行きのある、翡翠色の水をたたえた瀞状になっていて、実際、水着のおねいさんたちが水遊びしたり甲羅干し(これもそろそろ死語か)していたりした。旅行村からここまで遊びに来ているのだろう。
100選に入るだけあって、八淵の滝はあくまでも美しい。魚止めの滝から障子の滝部分も、切り抜けてみれば面白かったが、大擂鉢から上だけでも、一度訪れる価値はあるだろう。



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