ポンポン山

春めいてうららかな一日、ポンポン山に登った。京阪間で人気の高い低山。関西に来てからずっと気になっていながら長年行く機会がなかった。

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ポンポン山山頂

阪急高槻市駅(バス停の名前は阪急高槻駅)から川久保に行く数少ない高槻市営バス(9:10発)は、年配の登山者の方々でいっぱいだった。9:35 分頃、終点の川久保着。バス停のすぐ先で橋を渡り、川久保渓谷の左岸を歩きはじめる。しばらく行くと集落が終わり、一般車通行止めの林道歩きになる。ずっと渓谷沿いを歩く。この沢はところどころに小滝をかけ、せせらぎが耳に心地よい。紅葉の頃も良さそうだ。

右に釈迦岳方面に向かう道を分け、左に急坂を登るとまもなくようやく林道が終わる。このあたりにはわずかだが雪が残っていた。朽ちかけた木橋を何度も渡り返して、水量の減った谷底を歩くようになってまもなく、左は雑木林、右は杉の植林帯の丸太の階段状の急登になり、それが右に90度曲がってゆるく登って行くようになると、釈迦岳とポンポン山の間の尾根に出る。ここからポンポン山の山頂はすぐ。11時だった。

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川久保渓谷

山頂からはほぼ360度の眺望があるが、春霞であまり遠くまでは見えなかった。ヤマガラが囀っている。それほど広くはない頂上には、20人くらいの登山者がいた。大半は高齢の方々。昼食を摂って20分あまり休憩し、北に、出灰(いずりは)への道をとる。急な尾根筋の下り。

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下山路から明神ケ岳方面の展望

前の晩に時代小説作家多田容子さんの『自分を生かす古武術の心得』(集英社新書)なんて本を読んでいて、かなり「歩き方」を意識して歩いた。靴底を地面と平行に、極力「蹴る」ということをせずに、腰骨から歩を進めるように、腰の辺りを後ろからだれかに押してもらっているかのように、歩く。蹴らないからだろう、最初の長い舗装道路歩きや、山を下りてからの車道歩きがあまり苦にならなかったし、ある程度のスピードも出た。今までの歩き方だと、土の道にくらべて、舗装道路は明らかに疲れたのだが、それがなかった。山道の急登になっても、わりあい楽に足が前に出たような気がする。

ところが、下りが少しぎくしゃくしていた。元々、下りで膝を抜く歩き方はできていて、どちらかと言えば下りは得意、かなりのスピードで駆け降りるのも平気だったが、今回はそれがうまくいかなかった。あとで左足の付け根に少々突っ張るような、軽い痛みも感じた。今までは、登りで無駄に使っていた筋肉が、それによってこそ適度にほぐれて、下りの時にうまく機能していたのではないか、今回は省エネスタイルの登りで、それがなかったからではないか、とも思われた。でもそれがどの筋肉、どの部位なのかまでは分からない。たぶん単純に歩き方を元に戻すべきではないのだ。スキルに属することで、一皮剥けるときに、一時的に前より悪くなる、そういう現象の一種と捉えて、もう少し検証し工夫していくべきなのだろう。甲野善紀さんに発する「古武術」系のディスクールの良質なものは、必ず「自分の頭と〈身体〉で」考え、工夫していくことの重要性を説いている。多田さんも書いている:

良い結果が出ている中で、新しい感覚を試すのは動機に欠ける。ところが師匠の導きなどにより、環境ややり方、道具などを変えることで、「悪い結果」を体験すると、このままでよいとはどうしても思えなくなり、すみやかかつ必然的に、次のステップへ踏み出すようになる。 (44)

稽古とは新しい領域に挑むことであり、今の自分に百パーセント理解できるような状態に至っても、たかが知れている。自分のまだ知らない世界、境地があると認識することが、進歩の大前提だ。(180)

とにかく過去の形を潰し、捨て去る。それだけで、何かが見えはじめる場合もあるのだ(181f.)

山道が終わって、尸陀(しだ)寺跡(若い頃の一休宗純が庵を編んでいたところだそうだ)で橋を渡り(12:05)、出灰川沿いの車道歩きになる。

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出灰の風景

枚方亀岡線の車道に出たところ(12:25着)に出灰のバス停があるが、ここでバスを待つことはしない。この道を停留所一つ奥へ行ったところに高槻森林観光センターがあり、そこには樫田温泉なる温泉もある。それを楽しみに、次々やってくるダンプトラックを避けながら、ひたすら車道を歩いた。15分後、森林観光センター着。ところが...温泉は

臨時休業

だった。骨折損害の疲労収入。がっかりして座り込んでいたちょうどその時、川の向こうの道路を、やはり本数の少ないバスがぶおーと音立てて通り過ぎていった。次のバスは14:28。もともと、一風呂浴びてこの2時台のバスに乗ればちょうどよかろう、と思ってやってきたのだった。あと1時間半、ここでぼーっとしている他どうしようもない...。

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「お知らせ」

2組ほど、車やバイクで来て、やはり臨時休業に無念そうに帰っていった人たちがいた。それからしばらくすると、山頂で一緒だった72歳の I さん(とあとでお名前とお歳をうかがった)が車でいらした。出灰の登山口に車を停めて山頂往復して、やはり最後に温泉、とここまで車を走らせて来られたのだった。その I さんの車に、JR高槻駅近くまで乗せていただく。I さん、ありがとうございました。商店街を抜けて阪急高槻市駅まで歩き、帰りの電車に乗る。

    
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