
つい最近知ったのだが、これはすぐれた書物だと思う。副題は翻訳では「私のチェロ修業」とされている。クラシックには縁がなかったはずなのに、「三十四歳になってからフルートを、四十歳でチェロを始めた。どちらも二年くらいでやめてしまったが、五十歳になってからまたチェロを始めた。今では、家にいるときは毎日三〜四時間は演奏するようにしている…。」という著者の音楽との出会い、そして柏木真樹の言い方で言えば、「レイト・スターター」としての発見と洞察を綴っている。
原著はかなり以前に出版され、著者はもう亡くなっているようだ。イヴァン・イリイチなどの影響も受けながら、アメリカの教育畑で活躍していた人らしい。そうしたバックグラウンドもあって、豊かな智慧に満ちている。そのほんの一部:
「可能性には限界がないのだろうか? もちろん、限界はある。でも私たちが思っているよりずっと遠くにある。」(126)
「生徒たちが教えられたことを学ばない。その理由の大部分は、自分はできないと生徒たちが思い込んでいるからだ。」(144)
フルートを学んだ時の失敗について
「練習の仕方が他人頼みで、工夫が足りなかった。先生に言われたことはすべてやったが、指摘された問題点の克服方法を、自分で考えたりはしなかった。」(163)
「すべての音楽教師は、自分の生徒の何人がまだ音楽を愛しているだろうか、という質問を自分自身に問いかけてみるべきだ。」(188)
近ごろの日本では、遅くになって音楽を、楽器を始める人が増えているように思われる。そういう人にはもちろん、本書は大きな勇気づけになることだろう。そういう「レイト・スターター」でなくとも、さまざまな示唆に富んだ書物だ。
唯一、文中に頻出する「メトロノームに合わせる練習」だけは文字通りに受け取らない方がいい。それだけは鵜呑みにすると危険だ。



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