1カ月ぐらい前だったか、梅田の駅いっぱいに、柱という柱に iPod の広告が飾られていた。あれはあれでなかなかセンスのよいデザイン。その直後、柱の広告は、恐竜のハリボテをかぶった「オフィス」ワーカーたちの広告にいっせいに替わった。某 OS 会社の広告。以前からほんとうにあの会社の広告のセンスはすごいと思う。これ以下はありえないだろうという...。
後者が、なぜあんな宣伝でいいのか/なぜあんな宣伝になってしまうのか、と考えたら、やはり競争相手がいないからだろう。センスある広告によって自社製品を選ばせるという必要がない。競争相手がいないのだから、わざわざあんな愚かしいデザインで PR をする必要もないような気もするが、どうせ広告予算はありあまっているだろうし、時々街頭でその存在を誇示する、露出させる必要はある、というところだろうか。
でも、アップルの PR も、最近少しおかしくなってきている気がする。
たとえば iPod nano に添えられたコピー。
17,800円から。薄くて軽くて、写真もPodcastも持ち運べます。もはや持っていないと恥ずかしい。後半が余計だ。こういう余計なことは、かつてのアップルの広告は言わなかったのではないか。どちらかというと、「もはや持っていると恥ずかしい」と言った方がいい。...半分冗談。実は僕は iPod nano を買ったばかり。しかし広告コピーとしては、ここでは何も言わないのが正解だと思う。
次のこれも、見た瞬間、何かがひっかかった。
なぜひっかかったのか。僕は特別関西が好きなわけでもなく関西に住まわせてもらっている関東人だけれど、このスタンスはヘンだと思う。立ち位置ががあきらかに徹底して西新宿で、そこから大阪を見ている感じ。でありながら中途半端な大阪弁を使ういやらしさ(FileMaker 社の「こんなん欲しかってん」はかなり性格を異にする)。そもそも、「この春、大阪も」ってのは相当に失礼なんじゃないか。ここには、時間的なズレが前提されている。iPod 人気なんて、ほぼ同時進行だろうに、先発と後進のズレが際立たせられている。コピーライターはそういうつもりではと言うだろうけれど、そう読めてしまうのだからダメなのだ。だいたい、「この春」ってのは、この春、アップルが大阪で重点的に広告費を使ったというだけのことだろう(だから、平たく言えば、「この春、大阪にも広告費を使った iPod」だろう。それをすり替えてはいけない。上に触れたように、iPod のその広告デザイン自体は悪くなかったのだが)。さらにその下に付けられた「人々の日常にとけ込んだ iPod を大阪からリポート」ってのもひどい。明白にコロニアリスト的な視線だ。僕自身がそうでないとは言わないけれど、アップルが PR でこういうことをやってはいけない。何がコロニアリスト的か分からなければ、「人々の日常にとけ込んだ iPod を東京からリポート」というコピーがオペラシティ発で考えられるかどうか確かめてみればよい。CNET あたりならありうるかもしれないけれど。
推測するところ、このPRの主目的は、大阪周辺の人々に、梅田ならこんな店、難波ならこんな店がありますよ、ぜひお訪ねください、というあたりではなかったのか。それがなんでこんなタイトル/コピーになってしまうのか。
いずれにしても、これらのコピーは、どこか浮いているというか舞い上がっている。たぶん、その理由は、張りぼて恐竜の会社の広告がダメなのと同じなのだろう。ことポータブル・オーディオ・ディヴァイスに関して言えば、アップル製品が売れているからだ。売れすぎ、と言うつもりはないが、そのために cool さを失ってもらいたくはない。




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