カムニクはリュブリャーナの北東23キロ。ツーリズムの点では、現在は、街自体への関心からより、ここから先の Velika Planina やカムニク・アルプスへの拠点(あるいはたんなる通過点)としてしか意識されないのかもしれない。古い街というよりは古ぼけた街だ。それでも、丹念に見て歩けば、けっこう面白いものが見つかりそうな予感を抱かせる街だ。
「小さな城」から見る町並。
残念ながら北の山々は雲に隠れている。
カムニク(「石」の意)は、中世を通じてリュブリャーナやクランとクランスカ地域の経済的・文化的な覇を競った。何世紀もの間、トゥヒン谷 Tuhinjska dolina を通って東のコロシュカやシュタイエルスカ地方に向かう道を押さえて通商の鍵を握っていたが、この道が1600年頃南よりのトロヤーネ峠 Trojane 経由になってからはルートを外れてしまい、街は深い眠りに落ちる。19世紀末にここを終点とする鉄道がリュブリャーナから通されて、少し目を覚ましたのだが、今はまた静かにまどろんでいるように見える。
リュブリャーナからはおよそ20分に一本あるバスが便利だ。カムニクのバス駅から道を隔ててすぐ北のツーリスト・インフォメーションの女の子は(少なくともこれまで僕が行ったときには)いつでもヒマそうで、お客があればとても親切に熱心に応対してくれる。

「古い城」はずっと高いところにある。街の東側、山の上に、13世紀にAndeški 伯たちが建てたままの城の廃墟が残って街を見下ろしている。Andeški 伯のあと、ここは、ガレンベルク伯、ツェリェ伯、Turjačani が居城とした。1511年の地震で崩壊し、再建されたが、当主の娘が落雷で死んだ時に彼らはこの城を捨てた。そして17世紀後半、城は最終的に破壊された。現在では、廃墟脇に食堂が建ち、そこまで登る自動車道もある。
街のバス駅からバスで渡ってきた橋を渡り返すと、そこは城山の絶壁。自動車道と川に沿って右手、南のほうに少し歩くと断崖が切れ、登山道がある。小さな山でありながら、一歩入るとかなり深い山の雰囲気が漂っている。鞍部近くの草地に出たら左のほうに登って行く。まもなく城壁の廃墟の門を二つくぐり抜けて山頂に着く。山小屋ふうの食堂は、パスタと自家製サラミくらいのメニューしかないが、これがおいしい。そして何より、好天の時は、北のカムニク・アルプスの眺めが恐ろしくいい。もっとも、今回、2月に行った時は、あいにく天気に恵まれず、かろうじてカムニク鞍部 Kamniško sedlo (1903m)の広い雪面が見えていたが、両脇のブラナ Brana 山 (2252m) もプランヤーヴァ (2394m) も雲に覆われ隠れていた。
ところで、例の『こどもと行く山』というガイドブックは、北の道からの城山へのコースも載せていて、こんなふうに付言されている。
「カムニクには、リュブリャーナからの訪問客にとっての魅力がもう一つある。列車で行くことができるという点だ。これは、現代の車社会では、多くのこどもにとって、特別な体験だ。街ではまず〈小さな城〉を訪れてから〈古い城〉に登り、それから快く疲れた体を列車に乗せて帰ろう。」
そうなんだろうね。でも、ウチは車ないもん。それに、この線路、平日は一時間に一本程度の列車が走っているけれども、土曜日曜祝日は廃線同様。一本も列車は走らないのだ。

Kamnik は、北のカムニク・アルプスの山々、Velika Planinaの高原、Kamniška Bistricaの集落、広大な植物公園 Arboretum のある Volčji Potok、温泉のある Snovik などへの拠点となる。Kamnik を中心に運行している Kam-Bus 社のバス時刻表は、Kam-Busのサイトで手に入る(なんとエクセル・ファイルだが)。また、Kamnik から峠越えでスロヴェニアで最も美しい谷と言われる Logarska dolina に行くバスが、日祝のみ、一日一往復だけ出ている。カムニク発が朝の6:55。ロガルスカ・ドリーナ発が 16:55。(2006年3月現在。)



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