
タイトルを「直訳」すれば、「愛を求め、見つけることについて」。かなり特異な仕立ての恋愛コメディ。作曲家ミミ(モーリツ・ブライプトロイ)と、歌手ヴェーヌス(アレクサンドラ・マリア・ラーラ)の、熱愛と破局、冥界での和解と悲(喜)劇的な結末へとたどっていく物語。オペラでもドラマでも史上再三リサイクルされているオルフェウスとエウリディーケの物語を下敷きにしている。脚本は監督のヘルムート・ディートル自身と、小説『香水―ある人殺しの物語』やモノローグドラマ『コントラバス』
で知られる巧者の作家、パトリック・ズュースキント。105分。このドイツ版DVDには字幕は一切ないが、後述のように脚本は容易に手に入る。
恋愛コメディというラベルづけは、あまり正確ではない。物語自体は悲劇的だし、演技も徹底してシリアスなのだが、それを眺める視線、つまり台本やカメラの視点が非常にシニカルで皮肉なもので(それはオフでたまに流されるナレーションにもはっきりと現れている)、それによって、全体としてはコメディ「のようなもの」になっているのだ。このスタンスは、出版されている脚本に付されたズュースキントの「愛」に関する長広舌で、でもやっぱり巧みなエッセイにも明確だ。

いろいろな点できわどい綱渡りをしている作品だと思う。演技は徹底してシリアスだと書いたが、それはもちろんシリアスでなければならないのであって、そうでなければこの作品は崩壊する。だからすぐれた役者が必要で、実際その条件は見事にクリアしている。主演のブライプトロイは相変わらず達者だし、ラーラも十分に美しく、かつ上手い(特に眼の表情の豊かさに感心する)。熱愛しながら実にくだらない痴話喧嘩ばかりしている(そこがコメディなのだが)カップルを熱演している。脇役も、ウーヴェ・オクセンクネヒト(MON-ZEN[もんぜん])を初めとして確かなものだ。
いったいターゲットとしての観客はどこらへんになるかというと、少し考えてしまう。全体を統括する視線は、先に書いたように距離を置いたシニカルなものなので、ヒーローとヒロインへの同一化はことのはじめから禁じられている。この点が、通常の恋愛ドラマとはまったく異なる。強いて考えるなら、自分自身は安定したパートナー関係を持っていて、余裕のある人間か(少ないんじゃないのか、そういう観客は、ドイツには?)、最初から自身は破綻していて、映画とともにシニカルな視線を獲得することで安心するようなタイプか。ま、とにかく、デートで見るにはどうかと思う。
そういう微妙な位置に立つ作品で、万人受けするとは思えないが、映像は美しいし、実によくできた作品であることは間違いない。



コメントする