スロヴェニア・ワインの用語2で書いたように、arhivsko vino (アルヒウスコ・ヴィノ、アーカイヴ・ワイン)というのはドイツなどには見られない独特のプレディカート。とんでもない値段かと思うとさにあらず、手頃な値のものも出ていたので、買ってきました。

今回購入したのは、Ptujska klet (プトゥイ・セラー)の 1987 年のレンスキ・リースリング。そんなに高いものではなくて、1700トラル程度(ちょうど1000円ぐらい)。
もう少し長く寝かされていたものや、品種によっては(ラシュキ・リースリングやトラミネッツなど)これより10年ほど長く置かれてから出荷されるようで、ずっと高価になります。それでも、1971年のラシュキ・リースリングで 18000 トラルというのは、僕にはおいそれと手が出せませんが、決してとんでもない値段ではないのではないでしょうか。
一本一本、セロファンにくるまれていて、口のところは藁ひもで結ばれています。ボトルにラベルは貼付されておらず、エチケットも藁ひもで首に結びつけられています。ボトルは白カビで汚れたままにしてあります。

コルクの表面は黒っぽいカビに覆われ、しっとりと湿って、かなりやわらかくなっています。

グラスに注ぐと、こんな色。ストロボをたいたいい加減なライティングですが、感じはおわかりいただけますでしょうか。

香りと味は...ドライフラワー、ドライフルーツ、ヘーゼルナッツ、蜂蜜の香り。ほどよいフレッシュな酸味があって、甘みはその中にくるみこまれていて、口に含んだときにすごく気持ちがいいし、飲み込んだあとの余韻もいい。...済みません、田崎真也や佐竹城ではないもので、このあたりの語彙が貧困で。(しかもこれですら Julij Nemanič, Janez Bogataj "Wines of Slovenia" によるこのワインに関する記述を下敷きにしていたりします。)
1000円でこれだけ愉しめるなら文句はありません。これほどのリースリングは、アルザス(フランス)には、あるいはもしかしてドイツには、あるかもしれない。しかし1000円ということはあり得ないのではないか。
このアーカイヴ・ワイン、要するに蔵元で熟成するまで最適な管理をしておいてから買わせてくれるわけで、ワインセラーなど持っていなくて、買ったらすぐに開けてしまうような安易な飲み手(僕のことです)にとって有り難いシステムだと思います。また最初からそういうシステムになっているからこそ、ヴィンテージワインが程よい安定した価格で手に入れられるようになっているのでしょう。スロヴェニアのワインが、高品質で、買い得で、さまざまな意味で飲み手に優しいワインであることを典型的に示す例だと思います。
Vinska klet Goriška Brda (ワインセラー・ゴリシュカ・ブルダ)の説明によれば、アーカイヴ・ワインは最低4年は熟成される。セラーの温度と湿度が最適であるなら、ボトルは白カビに覆われる。これを拭ってしまうのは誤り。古いワインは飲む1時間前に開栓しなければならない。できれば注意深くデキャンタージュする。デキャンタージュによってワインの香りと味が開く。ワインはステムの高い大きめのグラスに注ぐ。
そして、こうしたワインは「敬意を持って味わうもので、good connoisseurs にのみ供される」。うーん、デキャンタージュもしていないし、敬意は抱いてますが、good connoisseur であるとは言いがたい僕には飲む資格がなかったのかも。



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