スロヴェニア語の「数」 その2

前回に、「旅行者」であれば、1人なら potnik(ポトニク)、2人なら potnika、3人以上なら potniki だと書いた。単数・双数・複数だ。

よろしい。数詞は(男性の場合)1、2、3、4がそれぞれ en, dva, trije, štirje であるから、1人の旅行者、2人の旅行者は、名詞はそれぞれ単数形と双数形を使って、
en potnik(エン・ポトニク)
dva potnika(ドヴァ・ポトニカ)
となる。3人、4人は「複数」だから、
trije potniki(トリエ・ポトニキ)
štirje potniki(シュティリエ・ポトニキ)
ここまではまあいい。それでは5人だったら? 5は pet だから、当然、
pet potniki
だと考えるのが並の人間だが、スロヴェニア人は並ではないのだ。正解は...

pet potnikov(ペト・ポトニコウ)

なんでって? どうやら、スロヴェニア語の数詞というのは、4までは一種の形容詞みたいなものだが、5以降は言わば中性名詞みたいなものらしいのだ。この正解の potnikov というのは、potnik の複数は複数だが属格(2格)の形であって、つまり英語で無理矢理言えば five of travellers に対応するような表現になっているわけだ。5以上の数を用いる場合は、だいたいこういう発想になる。(だいたい、と言うのはありがたい例外がちゃんと存在するということだ。)

ところで、主語になる名詞・代名詞の数に応じて、動詞にも、単数・双数・複数の変化があり、他のヨーロッパの言語と同じように一人称・二人称・三人称があって、一つの時制につき活用形のマトリクスは都合3×3=9になる。(実際は一部主語の「性」とのからみがあってもう少し複雑になる。)英語の be 動詞、ドイツ語の sein にあたる biti の現在形はこんな感じ。

単数 双数 複数
一人称 sem sva smo
二人称 si sta ste
三人称 je sta so

ここではとりあえず三人称の単数、双数、複数の形にだけ注目していただいて、その上で、これをご覧ください。スロヴェニアの幼児向けの、数の絵本。前半は数字そのものの導入、後半は簡単な足し算、引き算になっている。その後半から。
sestevanje.jpg

1 želva in 1 želva sta 2 želvi.
1 petelin in 2 petelina so 3 petelini.

動詞 biti が、上の例では双数三人称の sta、下の例では複数三人称の so になる。右側の 2 želvi、3 petelini が主語になっていると捉えれば、この使い分けはすぐに納得がいく。
では、このこちらのページは?
sestevanje1.jpg

下のイチゴ、
3 jagode in 1 jagoda so 4 jagode.
は、まあいい。さきほどの雄鶏と同じだ。ところが、ミカンの方では、
4 pomaranče in 2 pomaranči je 6 pomaranč.
となって、動詞は単数になっている。なんでって、さっき言ったでしょう、5以上の数は名詞みたいな扱いで、今の例で言えば 6 of oranges みたいな発想なんだ、と。(pomaranč は女性名詞 pomaranča の複数2格。)だから、5個以上のものは、単数扱いされるのだ。だから動詞は単数三人称の "je"。うーん、頭いてえ。

まとめると、基本的には(括弧内は数詞+名詞のグループが主語の場合の名詞の形)
1人、1つ...単数扱い(単数1格)
2人、2つ...双数扱い(双数1格)
3・4人、3つ・4つ...複数扱い(複数1格)
5人以上、5つ以上...単数扱い(複数2格)
ということになる。

5以上の数では、数詞が名詞を修飾しているのではなく、名詞が数詞を修飾しているのだと考えればいいのだろう。つまり5以上では数詞が名詞から主役を奪い取ってしまうのだ。同様のしくみは、数詞以外の数量表現の場合にも登場する。

en liter vina ワイン1リットル。ここで vina は vino ワインの2格。
pol litra vina ワイン半リットル。ここでは liter も2格の litra になってしまう。これは「半分」 pol という表現のせい。上の表現で vino から主役を奪った liter は、さらに pol に主役を奪われてしまうのだ。つまり英語に直訳すれば a half of liter of wine といったしくみになっている。

以上は数に関するスロヴェニア語の表現のややこしさの、ほんの一部。これだから、普通、外国語を学ぶと、店や飲食店で使う「〜を〜個ください」といった「旅行会話」的表現は真っ先にマスターするものだが、スロヴェニア語ではそれからしてえらくややこしい。初心者は、街に出ても、買い物も満足にできなかったりしておたおたするのだ。

Eno pivo / Dve pivi / Tri piva, prosim.  ビールを一つ/二つ/三つ下さい。

どうです、スロヴェニア語ってとっても面白そうで、あなたもやってみようかなという気になってきたのではありませんか? ...なわけねーよな。

    
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このページは、takuyaがnovember 17, 2005 12:02 AMに書いたブログ記事です。

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