美しい建築に囲まれたプレシェレン広場だが、ここが魅惑的なのは、独特のアナーキーさによる部分が大きい。
歩道と車道が画然と分けられていないのだ。石畳の広場の中央には、白線で円が描かれ、そこから、子供の描く太陽のように、放射状に線が引かれている。外側にも同心の大きな円がある。肝心なことは、これらの線は、何かを(たとえば人と車を)分けているわけではない、ということだ。
広場に出てくるヴォルフ通りとフリバル河岸にはさまれた曖昧な角地には曖昧にカフェのテラス席がひろがり(これは激しい雪が降り始めた数日前からさすがに撤去された)、それに隣り合う三本橋の一番上流の橋のたもとには秋から今まで、焼き栗屋の屋台というか木小屋が出る(こういう焼き栗屋は街の何箇所かに出ていて、決まって濃緑色から褐色の木の小屋なのだ)。

甘栗ではなくて焼き栗。こんな紙のコーンに入れて売られる。小300トラル、大500トラル。これは大(ただしかなり食べたあと)。
三本橋の一番下流の橋のたもと、中央薬局の前にはよく知られた(建てられて今年でちょうど100年になる)プレシェレンの銅像が立ち、暖かい季節には、前に書いたように、スケボーのガキが走り回っていたりするし、これの前で野外コンサートみたいのが開かれたりもする。

チョプ通りに入っていく西寄りに入った部分には、リュブリャーナの市街模型がある。ここも、夏場には、ソーセージやビールの屋台、テント席ができる。今はそこに、数日前から高さ20メートルもあろうかという巨大な本物の樅の木が立てられて、ぼちぼち飾り付けが行われている。いったいどうやって地面に固定しているのだろう?

この広場に集まる道のほとんどは、車両通行禁止になっている。ただ議会広場からやってくるヴォルフ通りと、三本橋の真ん中の橋から市庁舎広場前を経て東に向かう道だけが、車が通れるようになっている。プレシェレン広場に来る車は、そのどちらかからやってきて、もう一方から出て行くわけだ。ヴォルフ通りから橋を渡った先、青空市の先の交差点まで、つまり一本道で、それほど交通量が多いわけではないが、そのコースは、広場の円の半分ほどをかすめる。バス(多くはヨーロッパによくある中央が蛇腹で結ばれた二両連結のバス)も通る。

円の残りの半分は、秋のかなり遅くまで走っている汽車型の観光自動車(たぶんパリのモンマルトルあたりで始まって、いまやヨーロッパ中で見られるあのキッチュな白い汽車)が停まっていたり、タクシーが客待ちしていたりする。大雪の今日は、パワーショベルがそこに積み上げられた雪を掬い上げては、リュブリャニッツァ川に放り込んでいた。
三本橋の両脇の細い二本は歩行者用、真ん中は車両用ということに、一応、なっている(真ん中を歩く人も多いが)。ヴォルフ通りには、両側に歩道があり、車道とは一応区別されている。ところが、そういう区別は、このプレシェレン広場の中では、消滅する。ヴォルフ通りから、三本橋の真ん中の橋に向かって、車の通る道を示す線が引かれていたりはしないのだ。
あらゆる方角からやってくる人々や自転車が、あらゆる方角に向かっていく。当然ヴォルフ通りからここを通って橋を渡ろうとする車が、人とぶつかりそうになることはよくある。でもそこはそれこそまっとうな意味での「自己責任」なのだ。
つまり、あの中央の円は、何かを分けるというよりは、人も車も自転車も観光自動車もなんでもアリの、アナーキーなゾーンを表しているとしか考えられないのだ。そしてそれこそが、この広場に、独特の魅力を与えているのだ。



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