Postojna ポストイナ

8月末の雨の日曜日、リュブリャーナの街の北の方、交通量の多い Celovška cesta の道路ぎわに立っていた。二車線のまっすぐな道。立っていたのは道路の西側。目の前を、南に向かう車が、かなりの速度で、かなりの数、通り過ぎていく。その六割はドイツからの車で、ことにキャンプ用のキャビンを引っ張ったり、屋根にボートを載せている車のほとんどは、「D」のステッカーを付けていた(ドイツの車のしるし)。やれやれ。残りがスロヴェニアの車で、そこにオランダやベルギーやチェコの車が混じる。リュブリャーナの外周をめぐる環状道路が一部未完成なおかげで、南に向かう車はみんなここを通るらしい。

雨の中、そんなところに突っ立って何をしていたかというと、ポストイナへ行くツアーバスを待っていたのだった。

リュブリャーナのホテルに滞在中のこの日曜日。前日から雨の予報だった。洞窟なら雨天でもあまり関係なかろう、ということで、地元のツアー(ポストイナとリピツァの)にのって、出かけることにした。ブレットやリュブリャーナや海岸部の滞在客向けに、主にスロヴェニアの他の観光地をめぐるツアーは、二三の旅行会社が盛んにやっていて、山地やリュブリャーナから海へ行って帰ってくるもの、あるいはその逆、あるいはクロアチアに行くもの、あるいは海まで行って船でヴェネチアまで日帰りという強行軍まである。朝九時、ホテルの前に、バスではなくてツアー会社の寄越したタクシーが迎えに来た。その車で市のかなり外の大通りまで行って、バスを待っていたのだった。バスはブレットの方から、ブレットやボヒンの滞在客を乗せて来る。渋滞でかなり遅れてきた。リュブリャーナからの参加者はわれわれだけだった。

たびたびスロヴェニアに来ていながら、ポストイナに行ったことはなかった。リュブリャーナから1時間もかからず、海岸地方に行くときに必ず通るのに、つねに素通りだった。今回行くことにしたのは、tsujigaku さんがユーロディズニーに行ったのと同様の事情による。つまり家族サービス。だいたい、降りこめられてホテルの部屋に子どもと閉じこめられるのは、あまりありがたいことではない。

だが実際面白かった。洞窟の入り口をはいってすぐ、トロッコ鉄道で4キロほど奥まで行く。天井の高い、見事な鍾乳石で埋め尽くされた広間のようなところや、首をちょっと伸ばしただけでぶつかりそうな狭いトンネルを通っていく。トロッコという言い方は、二人ずつ前方を向いて座る、パイプ材で囲われただけの壁も天井もない車体についての形容であって、スピードはこの言葉からイメージされるものとはまったく違う。登ったり降りたりはあまりないけれども、洞窟の形状にそってかなり左右にくねくね曲がる。それを、ディズニーランドのビッグサンダー・マウンテンみたいな速度で、作り物でない自然の大きな造形の中を延々走り抜けていくのは、ビッグサンダー・マウンテンよりもはるかに面白い。そして列車の終点の大きなホール状の部分はビッグマウンテン (Velika Gora) と呼ばれているのだった。大きな洞窟の中に山ができているような地形からだろう。

そのヴェリカ・ゴーラの麓に、スロヴェニア語、英語、ドイツ語、イタリア語と書かれた札が立っていて、好きな言語の札のところで待っていると、ガイドのおばさんがやってきて、彼女に従って残りの奥の部分、およそ1.7キロを歩く。ドイツ語のグループに入ったので、周りはみんなドイツやオーストリア、もしかしたらスイスからの人々。無数のつらら状の、カーテンのような形状の、麺のような形の、鍾乳石。石筍、巨大な石灰柱。上下に入り組んだ洞窟。地下の川。それらが、巧みに光源の隠された照明の中に浮かび上がる。

徒歩コースの最後には水盤が造られていて、その中に、目のない地下の住民、山椒魚の仲間(?)の Proteus anguinus が数匹、放されている。17世紀に発見されたとき、地元の人々はドラゴンの子どもかと怯えたが、当時の学者ヴァルヴァゾールは、地下に住む worm の一種だと断じた。自然科学的な「啓蒙」がまだ明快な力を発揮していた頃、自然科学が「啓蒙」でありえた頃…。

洞内は写真撮影禁止なので、写真はありません。どこの国の連中も(ドイツ語以外のグループも)みんなパチパチやっていたし、それでガイドのおばさんに怒られたりもしていたけれども。

ツアーのバスはそれから昼食をとる暇もなくリピツァに向かったけれども、ここについては今あまり書くことはない。その後のの帰りのバス、通路を挟んだ隣の英国人男性は、ずーっと「数独」の問題を解いていた。最初から最後までそればかりの小冊子。日本産のこのパズルがイギリスで大流行しているということは、あちらで Mac 用の数独ゲームがいくつも作られていることから知っていたが、本当にイギリス人がやっているのを目撃して、ちょっと面白かった。

    
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このページは、takuyaがseptember 14, 2005 10:39 PMに書いたブログ記事です。

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