リュブリャーナ人の裏山、シュマルナ・ゴーラ

"hišna gora Ljubljančanov" という言い回しをどう日本語にしようか、少し考えてしまった。「リュブリャーナの人々のホーム・マウンテン」という「日本語」も考えたのだが。

それはともかく、シュマルナ・ゴーラ Šmarna Gora というのはそういう山です。少し前、JMM の成田真巳さんの記事にも書かれていたけれど、リュブリャーナの人たちはほんとうによくここに登る。リュブリャーナの北西すぐ近く、標高669mの小さな山。ちょっと歩き慣れた人なら、登りに一時間もかからない。リュブリャーナ盆地から、北西のクラン Kranj やシュコフャ・ローカ Škofja Loka といった町までの間に広がる平野部の真ん中に、ぽこんと突き出している二子山。スロヴェニアの人々にとって、登山というのはスキーなどと並んで「国民的スポーツ」であるようなのだが、リュブリャーナという「都会」からは最も手軽に出かけられる山がここになる。成田さんも書かれている通り、早起きのスロヴェニア人は早朝から働き、3時頃にはとっとと仕事をやめて帰宅する人が多いが(実際その時刻、リュブリャーナ市内や周辺の道は渋滞する)、そうして平日の午後にここにやってくるケースも多いという。

ちょっと霞んでいるけれど、リュブリャーナの城山から望むシュマルナ・ゴーラ。空気が澄んでいれば、ずっと背後にトリグラウまで見えるはず。

Šmarna gora

9月下旬、一週間も雨が降り続いて、すっかり冷え込んだ後、この週末から久々によく晴れて暖かい日が続いている(とは言え、朝は霧が濃くて、11時頃にようやく晴れる)。日曜日、いまやリュブリャーナ人であるわれわれもこの hišna gora を見てこなければ、というので出かけた。

『こどもと行く山』とでも訳すかな、Urška in Andrej Stritar, Z otoroki v gore. Ljubljana: Sidarta, 1998 というガイドブックがあって、その記述を頼りに行ってきました。(ちなみにスロヴェニア全土の山をピックアップしたこの本は、A5ぐらいのサイズ、図版と記述のバランスとレイアウトが巧みな、とても美しく見やすく作られたよい本です。「こどもと行く山」というタイトルでなめてはいけない。トリグラウだって載っている。ハードカバーでA5なので、持ち歩きにはあまり向かないかもしれない。)

Z otroki v gore

アプローチはバスで。目抜き通りのスロヴェニア通り Slovenska cesta の、鉄道駅に近い北の端の方、大きな Mercator スーパーの前の Bavarski dvor という停留所から出るGameljne行き16番のバス。(時刻表はこちら。このバス停は、数多くの路線が通るけれども、15番、16番だけは1ブロック北寄りの別の停留所になっているので注意。)20分ほどで、サヴァ川を渡り、シュマルナ・ゴーラ山麓のタツェン Tacen という集落に着く。

スロヴェニアで最も登られている山というシュマルナ・ゴーラには、数多くの道が付けられているのだけれど、その中でもっとも古典的かと思われる「巡礼の道」romarska pot を行く(山頂に教会があるのだ)。タツェンのバス停から道をはさんで北側、集落の間の舗装された道を歩いて行くと、まもなく登り口に着く。多くの人に踏まれている道だから、かなりの部分が、幅のある谷状になっている。周囲は大きなブナも目立つ混合林。ちょっと面白いと思ったのは、この道の付けられ方が、ボヒンのルードニツァの登山道と全く同じだったことだ。まずまっすぐ上へ、山を円錐にたとえればその母線に沿って、道は急登していく。それは山頂までは続かず、中腹で左に折れ、今度は巻き気味に登っていって、鞍部に出る。そこからまっすぐ山頂へ。この道の付け方がルドニツァと完全に同じなのだ。鞍部はどちらも牧草地状になっている(シュマルナ・ゴーラではそこに2、3軒の家があって、トウモロコシ畑もある)。たった二つの例だから、どういう一般論にもならないけれど。シュマルナ・ゴーラの道自体は、ごく普通の都市近郊低山の山道の感じ。ところどころかなり急だけれど、難しいところも危険なところもとくにない。

登っている間はそれほどにも思わなかったのだが、四方八方から人々が登ってくる。それらの道は、「巡礼の道」が中腹で折れる地点とか、鞍部とかで次々合流し、そこから山頂へはほぼ一本になる。小さな子ども連れ、赤ん坊を背負子に入れている父親、若いカップル、中学生ぐらいのグループ、おじいちゃん、おばあちゃん、とにかくあらゆる年齢の人々が登っている(大人は登山用のストックを使っている人が多い)。決して広くはない山頂にはそれは大変な数の人。久しぶりに好天の日曜日。おまけに、正午からちょうどブラスバンドに高校生チアリーダーみたいな女の子たちを加えた野外ミニコンサートが、山頂の教会前の小さな広場で行われていた。(あとで、チューバのおじさんは楽器を剥き出しでぶらさげて、山を下りていった。)
Koncert
この広場の下は、山小屋というかセルフの食堂(まるで小さな学食の配膳口のようだ)になっていて、周囲の野外テーブルは、ソーセージやザウアークラウトのスープや豆のスープやラズベリーのケーキを食べたり、ビールを飲んだりする人々で一杯だった。テレビ局も山頂直下まで四駆車で乗りつけて、人々にインタビューしていた。大方今日の国民投票に関する質問でもしていたのだろう。四囲の展望もとてもよく、折畳みの寝椅子が並べられていて、そこで眺望を楽しみながら日光浴をしている人も多い。

追記。最近、『地球の歩き方 (A25) 中欧』を取り寄せてみたら、以前に比べてずいぶんいろいろと記述が改善されていて、このシュマルナ・ゴーラまで載っているので感心した。でもなぜかシュマルナ・ゴーラがちょうど180度移動させられてリュブリャーナの「南東」になっている。また、8番のバスを使って終点(Brod のことか)まで行くことになっているが、16番のほうがアプローチが少し短くなる。

追記2。最近になって初めて気がついたのだが、リュブリャーナのツーリストインフォメーションでは、シュマルナゴーラの詳細な地図(約1万分の1)を無料で配布している。小さく折り畳まれた、"ŠMARNA GORA - VODNIK, ZEMLJEVID/ŠMARNA GORA - GUIDE, MAP" というパンフ。

地図付きパンフ

ロッククライミングコースまで含めてなんと1ダース以上もある登山道もすべて記載されているほか、山頂からの展望、この山にまつわる歴史やスポーツの解説、山の動植物にかんする説明がスロヴェニア語と英語で記されている。コンパクトだけれどもとても充実したガイドだ。無料のこれを使わない手はない、のだった。また、シュマルナゴーラの案内専門のサイトもある。

    
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このページは、takuyaがseptember 25, 2005 11:47 PMに書いたブログ記事です。

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