スロヴェニアにはゴキブリ・ワインがあるのだ。Ščurek シチューレクというこのワインの名前は、まぎれもない、ゴキブリを意味する。
もちろん、ゴキブリをプレスしてモストに混ぜているとかいうことではなくて(うわーい)、生産者の名前がたまたまシチューレクであるだけのこと。ブルダ地区のストヤン・シチューレクさん。品種としては、赤ではメルロ、カベルネ・ソーヴィニョンなど、白はシヴィ・ピノやシャルドネを作っている。目印は、ゴキブリではなくて、なぜかコオロギと、ヴァイオリンの絵柄。たぶんイソップ物語を想起させているのだろう。(ヴァイオリンはギターみたいに平板だし、弓は妙な向きに反っているが。)
しかしゴキブリという自分の姓をそのままワインに付けて出してしまうところがすごい。というか、そもそもそういう姓が存在すること自体がすごいか。日本と違ってゴキブリというのは微妙に愛されている...ということはないと思うのだが。
で、こんな名前であるにもかかわらず(?)、ここはとても上質のワインを造り出している。
この2004年の Cabernet Franc は、1790SIT。ちょうど1000円ぐらい。カベルネ・フランク (Cabernet Franc または Frank) というのは、カベルネ・ソーヴィニョンのごく近い親戚だが、4〜6年は寝かせておかなくてはいけないらしい。今のアパートには、ヨーロッパではごく普通のこととして、セラー(要するに地下の物置)があるけれど、日本に帰ったらそんなものはないから、台所の隅に置いておくことになる。台所の隅でじっとしているシチューレク...。やっぱりゴキブリか。そしてゴキブリと同じく、4年も待てずにすぐに「退治」したくなってしまうかもしれない。早めに退治しても、きっとそれなりにおいしいゴキブリに違いない。
でもとりあえず、ここでは、とっとと地下に閉じこめてこよう。



ゴキブリワイン、って嘘みたいな名前ですねぇ。
我が家のワインも、ゴキブリと同居しているので、
あまりに可哀相になって、ついにワイン用冷蔵庫(っていうのか?)を
購入いたしました。
日本ならまず売れないだろうな、こんな名前のワイン。
プレスされたゴキブリを想像してしまいました。ああ気持ち悪い。
ゴキブリなんて名字、耐えられない、とは思わないのだろうか。
悪魔さん、って名字もありますよね、ドイツ人には。
どういう言語感覚なのか、いまだによく掴めない。そのあたりが。
うん、言語感覚というか、まずやっぱりゴキブリに対する感覚は、さすがに愛されてはいないだろうけれど、ちょっと日本とは違うのかもしれないと思います。ゴキブリがおぞましいとすれば、それはたとえば日本の湿度の中でこそ際立つのではないか。
言語に関して言えば、ゴキブリについて特に何を説明するものでもありませんが、ドイツ語だと日本語で言う「動物」も「虫」もTierでしょう? 日本語でも生物学的には昆虫も「動物」なのかもしれないけれど、日常的にはそういう感覚はない。逆にドイツ語にはもちろん Insekt という単語もあるけれど、これはあまり日常的な語彙ではないような気がする。スロヴェニア語もドイツ語と同じではないかと思います。Tier は žival。insekt という単語はあるけれどあまりフツーではない。
だから何、ということでもないですが、そこらへんから生き物の捉え方の枠組みが違っているようだとは言えそうです。なんかたんなる一昔前の言語相対論みたいな話ですが。