8月に行った場所の一つ、海岸のイゾラ。
イゾラ自体、スロヴェニアのわずかなアドリア海岸部に並ぶ町の中では、地味なほうかもしれない。ピランはれっきとした古都だし、ポルトローシュは、海辺の一大リゾートだ。イゾラにはヨットハーバー(マリーナ)はあるけれど、通りすがりの旅行者にはあまり関係ない。
それでも、そのヨットハーバー沿いのプロムナード( sončno nabrežje 日なた河岸、という名前が付いている)は、いくつもの飲食店が並んでいて(ディスコもある)、海のすぐ前に出るテラス席は、夏場、多くの人々で夜遅くまでにぎわっている。そういう店の一つ、たとえばパランガル Parangal で、各国からの旅行者とともに魚介の料理に舌鼓をうち、日本と違ってあまり潮の匂いのしない潮風に吹かれながら、杯を傾けるのもいい。
でも、僕が気に入っているのは、ちょっと引っ込んだ、小さな入り江を思わせる小さな食堂。
マリーナの一番奥、リビツァ Ribiča という食堂と、隣の釣具店が凹角を作って接している、その奥の角が入り口。そこから入ると、両側の建物に挟まれた小さな三角形の内庭状の空間がある。簡単な屋根が差し掛けられているだけで、雨の日は、周囲から流れ込んだ水が足元を流れて行く。その屋根の下には、ブドウの木が枝を伸ばしている。入り口付近には、かつてここの子どもが使ったのだろうか、小さなすべり台などの遊具がうち捨てられたように置いてある。裏の道に面した奥の屋内は、バアになっていて、地元の男たちのたまり専用という趣がある。(この裏の道の方が、この食堂の正式のアドレスになっている。)
これが Koral という店。テーブルは5つもあるだろうか。給仕をしてくれる男や女は、愛想を振りまくわけでもなく、不躾でもない。英語のメニューも用意しているが、ここの客はほとんどが地元(イゾラか、少なくともスロヴェニア)の人たち。格別すごい料理が出るわけではないが、外れはない。
ヨットハーバーの少し先、小さな岬の北側は、海水浴場になっている。玉砂利と岩の小さな浜。その手前、陸の側は、松林と草地の公園のようになっている。幼児向けの遊具を置いた一角やすべり台のある砂場があって、草地にはマロウの花が点々と咲いている。(港を挟んで反対側、西のほうに、もっと整備された海水浴場があるようだが、行ったことがない。)
ヨットハーバーの付け根には、夏の間、玩具や土産物や衣類を売るいくつもの露店と、移動式のゴーカート施設、小さな小さな円をぐるぐる回る豆機関車などが出る。露店では、ずいぶん怪しげな品も出ていて楽しい。例えば中国製の「たまこっは」(そうひらがなで書いてある)。「たまごっち」にとってもよく似ている。あるいは漢字を意匠にしたインチキ入れ墨。ここの漢語はけっこうまともだった。
泊まったのは、港の先端の、ホテル・マリーナ。ここも3年ぶりぐらい。正面脇に、以前はなかったガラス張りのスペースが出来ていて、ジャグジー風呂が据えてあった。エレベーターも新しくなっていた。が、客室はまったく変わっていなかった。3階のロビーから、海の向こうのヴェネツィアがくっきりと見えた。



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