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ダニ

ヨーロッパには厄介なダニがいる。いや、何かの比喩ではなくて、虫そのもののことだ。

噛まれるとひどく痒く痛いらしい。つまりは刺す虫の一種。蜂などと違って、刺されること自体によって命に関わることはないが、困ったことに二つの病気を媒介する。一つはライム病(英:lyme diesease)。辞典の説明によれば、「スピロヘータの一種による炎症性疾患で, マダニ属のダニによって媒介される」そうだ。「初め遊走性紅斑・発熱・悪寒の症状を呈し」て、これは数週間で治まるのだが、そのまま放っておくと、「のち関節痛・関節炎, 心臓・神経系の障害に至る」。もう一つは脳炎(英:tickborne encephalitis)。文字通り脳をやられるのでこれもちょっと怖い。

ダニは、森林や、都市部でも公園の林や草地にひそんでいて、通りかかる暖かいもの(要するに人間)を感知して飛び移る。そしてしかし日中はそのままじっとしていて、夜、人が寝ると、噛みつくのに手ごろな場所をさがして噛みつく。だからそういうところを歩いて帰ってきたら、衣類は着替えて洗濯し、しっかりシャワーを浴びれば問題はほぼ防げる。噛まれても四時間ぐらいのうちに引きはがせば、感染は防げる。

山林を歩くのは好きで、ヨーロッパをうろうろしていながら、今まで気にしたことはなかった。今回は家族を伴って少し長い滞在になるので、家人が気にした。が、出発前に詳しく調べる余裕も策を打つ余裕もなくこちらにやって来た。来てから予防接種でもしてもらえばいいやと思っていたのだ。そこでB先生や他の人から伺ったのが上のような話だ。脳炎の予防接種は期間を置いて二回か三回しなければならない。そうしないと免疫が形成されない。今回の中途半端な滞在期間からすると、今から注射をしても意味はなさそうだ。洗濯とシャワーをしっかりするしかあるまいし、それだけでいいだろう。

このダニは、このあたりにはかつてはおらず、西から次第に広がってきたという。「まるで資本主義みたいですね」とくだらぬことを言うと、B先生は、「そう、人の血を吸って…」とまるでお約束のような返事を日本語で即座に返してくださるのだった。

# この項の内容の正確さは保証しかねる。こちらに来られる方は各自確認してください。