ドイツのパンというとまず思いつくものの一つがブレーツェル Brezel。もともと南ドイツやドイツ語圏スイスのもので、ドイツでは一日二万個が食されると言う。日本語では〈プ〉レッツェルなどと呼ばれたりもしている。おそらく、英語の pretzel から来ているのだろう。Pretzel は英語で Brezel を指す単語(俗語でドイツ人を指したりもするらしい)だが、同系統の味付けとはいえ、クラッカーのようなものに化けてしまっている。日本でプリッツなどの商品名で売られている菓子は、さらにその延長上にある。
ブレーツェルはクラッカーではなくパンの一種。表面は少し固く歯ごたえがあって、濃い褐色で艶があり、粗塩がまぶしてあって、中は少しもちもちした食感のパン。塩味だからビールなどに合う。ドイツなどで食べていて、日本でもたまに食べたくなる人は多いのではないか。8の字と言われたりする独特の形は、腕組みした太陽だとか幼いキリストを抱きしめる聖母のイメージであるとか言われている(本当かどうかは知らない)。
大昔 (1977) に放送され、「異人館ブーム」を作り出したNHKの朝ドラ『風見鶏』は、三宮で頑張っていたドイツ人のパン職人の話だった。神戸周辺はそんな人たちによってドイツパンの製法が入った経緯があるようで、それ系らしい古いパン屋がいくつかある。そして周辺のパン屋も、特に震災前は、このブレーツェルを看板の意匠にしているところが多かった。
そういう看板を掲げていても、しかし実際にブレーツェルを作っているところはほとんどなかった。最近、家の近くに開店したBという店が、時々作って売るようになったので、嬉々として買ってくる。

ブレーツェルのレシピはたとえばここ。
ブレーツェルの表面の独特の光沢は、ラウゲ Lauge と呼ばれるアルカリ液に漬けることで得られる。水酸化ナトリウム(Natriumhydrogenoxid、NaOH 苛性ソーダ)が使われるようだが、これは劇薬だから、日本では通常重曹と呼ばれている炭酸水素ナトリウム NaHCO3(ドイツ語で Natriumhydrogencarbonat)が使われる(牛乳でもいいらしい)。ドイツではナトロン Natron という名で知られている。
昨日同じ店で売っていたブレーツェルは「アルザス風ブレーツェル」と称していて、この光沢がない。ラウゲン処理をしていないのかもしれない。


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