april 2005アーカイブ

エーミールと探偵たち
松竹 (2003/12/25)
売り上げランキング: 5,897
通常4日間以内に発送

この blog の "German Cinema" カテゴリーでは、日本では未公開のドイツ映画ばかりを紹介してきたのだけれど、2003年のこれは国内DVD既発売。三度めの映画化だ。
ケストナーの名作を換骨奪胎して、うまく仕上げている。今どきのドイツのガキどもにいかにも受けそうな飾りやくすぐりや演出。ベルリンの子供たちの中心にいるのはグスタフではなくて女の子のポニー。ポニーの口笛にこどもたちが集まってくるシーンにはラップ。ラップは、今のドイツのこどもたちには受けがいい。こんな DVD が爆発的に売れているくらいだ。

最初2回(1931年と1954年)の映画化作品は、このDVD一枚に収められている。
B00008DME9.03._SCTZZZZZZZ_.jpg

1931年のウーファの白黒映画は当然ながら原作に一番忠実。1954年のシュテンムレ監督作品、そし2003年のブーフ(ブッフではない!)監督作品へと、少しずつ原作から離れた脚色や設定が大きくなっていく。それでも3作品ともまぎれもなくケストナーの『エーミールと探偵たち』であり得ている。何が変わって、何が変わらないかに着目するのも面白かろう。

ベルリンを象徴する風景の違いも面白い。54年版では、第二次大戦の傷跡の象徴であるカイザー・ヴィルヘルム教会。03年版では、東西統一によって再び通行可能となったブランデンブルク門。

注目すべきは、最初の映画作品のスクリプトをビリー・ワイルダーが書いていることかもしれない。ハリウッドに行く前の ヴィルダー(Wilder)。その名前は、54年版にもクレジットされている。新聞記者をやっていた Wilder が映画のスクリプトに手を染めたのは29年。33年にはナチスを避けてアメリカに渡ってしまうのだから、このわずかな時期にエーミールが製作されたことは僥倖と言うべきなのかもしれない。

2003年版では、エーミールは母親ではなく父親と二人暮らし。しかも現代ドイツの離婚率の高さを反映して、母親が家を出て行ってしまったことになっている。ポニーの両親も離婚の危機にあり、グスタフの母親であり、夫と死別した女性牧師が、最後にはどうやらエーミールの父親と仲良くなっている。(原作にはないこの牧師、『愛され作戦』Stille Nacht で好演していたマリア・シュラーダーがとてもいい。)

この物語を起動させるには、まず最初に優等生のエーミールが警察を恐れるようになるエピソードを置かなければならない。これもそれぞれ。1931年版は原作にほぼ同じ。1954年版では海賊ごっこをやっている子供たちの仲間になったエーミールが仲間とともに、捕えられたアザラシを海に逃がす。2003年版では、古着/古靴泥棒。これは日本の観客には説明が必要かもしれない。ドイツの街角には、いわゆる途上国へ送る古着、古靴を集めるコンテナがある。2003年のエーミールは、お前の格好はベルリンみたいな都会に行くにはダサすぎる、と友人に言われて、この友人とともに、古着古靴コンテナをこじ開ける悪事に加担するのだ。

31年版、54年版についてもう一つ必要かもしれない注釈は、かつてのドイツのホテルのトイレ。かつてのドイツの安宿ではトイレは共用で、"00" という「部屋」番号がついていた。"00"という名前のトイレ用洗剤もある。

悪党グルントアイスを警察に引き渡したあとの後日談もそれぞれだ。なぜかエーミールたちが警察のスポーツ大会に招待されることになって一番冗長なのが1954年のエーミール。一番しっくり来るのが友人たちとの再会をプレゼントされる2003年版。これはポニーを「探偵たち」の中心に据えたことが効いている。
エーミールとこどもたちの集団が悪党を追いつめていくシーンが一番迫力を持っているのも最新のフランツィスカ・ブーフ作品ではないだろうか。

2003年版の主演の二人、エーミールのトビアス・レツラフとポニーのアーニャ・ゾマーヴィラは、DVDに収録されたインタビューで、ほっとするほど素直に、こどもは団結することが大事なんだ、と言っている。監督のフランツィスカ・ブーフは、ちょっと醒めていて、こどもがあんなふうに団結することなんてありえない、でもこの物語のああいう状況をみて、自意識を強めるだろう、と言う。

映画はいずれも名作だが、三番煎じのブーフの2003年作品がとてもいい。

原作のペーパーバック版:

原作の朗読CD:

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

itunes.png

EU の主要国ではすでに iTunes Music Store サービスは行われているが、music.chの記事によると、この28日からスイス、デンマーク、ノルウェーでも始まるらしい。

今年中にはと言われている日本はさていつ?

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

ichat.png

Tiger に付属する iChat3 では、Jabber のアカウントを使うことができる。そして Jabber は他のインスタントメッセンジャーとの間に透過的なブリッジを形成することができるので、MSN や Yahoo! メッセンジャーともやりとりができる。...というのがこの記事。
MacTouch :: Articles et tutoriels Mac :: Jabber : découverte, installation de Psi et utilisation dans iChat 3

Jabber についての日本語による解説はこちらが詳しい。

iChat3 には、Jabber のアカウントを作成する機能はないので、それは別のソフトを使う。上記記事では Psi というクライアントソフトを使っている。残念ながら日本語には対応していないが、アカウント作成には差し支えないようだ。そこで作ったアカウント情報を iChat3 に入れる。

適切な Jabber サーバを選ぶ必要があるが、今後、自分の Mac を Jabber サーバにしてしまえ、というのがはやりそうな予感。

どの程度日本語でも使えるのか、たとえば Yahoo! メッセンジャー日本語版とのブリッジはうまくいくのか、未知数だが、いずれにせよ、Tiger を待つ楽しみが一つ増えた。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

以前のエントリのコメントにも書いたけれど、翻訳のような作業で案外厄介なのが外来語の音訳だ。たとえばドイツ語から英語へといったように、同じアルファベット系の言語同士の翻訳であれば、訳者はもとの発音など分かっていなくても、涼しい顔をしてそのまま転記しておけばいい。(これは中国語から日本語へといったケースにもあてはまるだろう。)ところが、アルファベットを使う言語から日本語へといった、まったく文字システムの異なる言語間の翻訳では、原音を確かめて「音訳」しなければならない。(もっとも、地名などの固有名詞ですら音訳ではなく「翻訳」されることもある。つまりそれぞれの言語内部での呼び名に置き換えられる。Wien は日本語では「ウィーン」という「翻訳」が定着しているし、Köln はフランス語では cologne になってしまうし、München は英語ではMunich、イタリア語にいたっては Monaco di Baviera になってしまう。)

東西対立の全盛期(という言い方はヘンか?)、英米のミステリでは東西ドイツ(あるいはナチスドイツ)がしばしば舞台になっていた。そういう作品の翻訳を楽しく読ませていただいていた中でいつも気になっていたのが、「ストラッセ」という音訳。strasse だ。英語の street にあたるドイツ語。これは標準ドイツ語では Straße で、カナ表記としてはおそらく「シュトラーセ」が一番妥当なところだ。

「ストラッセ」と音訳したくなる気持ちは分からないではない。だが、ドイツ語の語頭に st-, sp- というパタンが来るとき、この s は例外的に単独で [ʃ] の音を表す。だからあえてカナ表記すれば「シュ」あるいは「シ」。

それはまあいい。厄介なのは、ß だ。本来 s (エス)と z (ツェット)の組み合わせ文字で、文字の名前としてはそのまま「エスツェット」と呼ばれる。これはそれ自体の音としては、ss とまったく同じ [s] だ。近年の正書法改訂以前には、ss が使われるのは、前が短母音でかつ後ろが母音である場合に限られていた。それ以外の場合は ß。正書法改訂(その行方は実はまだ不透明な部分があるのだが)以後は、後ろが母音でなくても前が短母音でありさえすれば ss が使われるようになった。つまり基本的に、ß は、前が長母音であるしるしであり、正書法改訂以後は、ますます純粋にそういう意味を持つようになっている。

実はスイスドイツ語の正書法には ß は存在せず、もともとすべて ss で表記される。タイプセットに ß を持たない英語圏でも、ß は ss で表記される。だから Straße は strasse。同じ子音の文字が二個連続する場合、たいていの言語で、前の母音は短くなる。したがって、strasse がシュトラッセにされてしまうことは十分「理解」できるのだが、元来これは ß、つまり前の母音は長いのだ。

関連してもうひとついつも気になるのが、ch の前の母音。この ch は二文字組みで〈一つの〉子音([x] または [ç])であって、二つの子音ではない。したがって、その前の母音は必ずしも短くならないのだが、その点がしばしば誤解されているように思われる。だから Buch が「ブッフ」にされていたり、hoch が「ホッホ」にされていることがしばしばだ。辞典類には、発音記号が [bu:x]、[ho:x] と記されている。つまりそれぞれの母音は明確に長母音として扱われているのだ。

問題はおそらく、「子音二つの前の母音は短い」という原則の曖昧さにある。子音二つとは、子音文字二つなのか、それとも子音の音そのもの二つなのか。ß と ss による区別は、文字の数を利用した区別だと言っていいだろう。ところが、ch の場合は、文字数の問題ではない。

日本語の長母音とドイツ語の長母音は長さをとっても性質が異なるように思われる。日本語の長母音は二音節分だと言ってほぼよさそうだが、ドイツ語の長母音の長さは、感覚としては1.5音節ぐらいだ。これにはアクセントの性質の違いも絡んでいる。したがって、所詮カナによる音訳は原音を表せるわけではなし、Straße の音訳が「シュトラセ」であろうと「シュトラーセ」であろうと、Buch の音訳が「ブフ」であろうと「ブーフ」であろうといいようなものだが、「シュトラッセ」「ブッフ」という促音表記だけは明らかな誤解をはらんでいる。

所詮カナによる音訳は原音を表せるわけではない、と言ったけれど、しかし本当はこう言うべきだろう、「文字は音を表さない」と。文字に音を見出すことができるのは、すでにその音を知っている者だけだ…。

ま、とにかく、「ストラッセ」だの「ブッフ」だの「ホッホ」だの書かれると、僕自身はとっても気持ちが悪いのだ。

# いや、実を言うと僕自身、以前にやった翻訳(ドイツ語からの)の中で、スロヴェニア語の地名の音訳でたくさんミスを犯している…。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

関西のこのあたりもぐっと暖かくなって、ツバメが飛び始めた。

タイトルは、「ツバメ一羽では春だとは言えない」、つまり、「喜ぶのはまだ早い」といった意味合いのフランス語の成句だが、面白いのは、ドイツ語や英語だとこれが春ではなくて夏になってしまうこと。
Eine Schwalbe macht noch keinen Sommer.
One swallow does not make a summer.
「ツバメ一羽ではまだ夏にならない」
ドイツ語英語ではどうやらツバメ (Schwalbe / swallow) は春ではなく夏と結びついているらしい。

ではスロヴェニア語はどうかというと、フランス語と同じ春。
Ena lastovica še ne prinese pomladi.
"pomlad" が「春」だ。やはりドイツやイギリスよりずっと南国だからか。それとももっと北のスラブ諸語でも同じように言うのだろうか(まだ調べていない)。だとすれば南北はあまり関係ないことになる。

いずれにせよ、ツバメは、基本的にこれからよい季節がやってくるしるしと捉えられていることはわかる。だからこそ、一羽でよろこぶな、という成句が成り立つわけだ。

ちなみに、旧東ドイツで Schwalbe と言えば、SIMSON の青いバイク。映画『グッバイ、レーニン!』でも主人公アレックスがこれに乗っていた。Ostalgie オスタルギー(旧東独を懐かしむ風潮)の定番アイテムの一つ。


昼にツバメが飛び始めるのと同時に、夕方にはコウモリが飛ぶようになった。コウモリというもの、かつて住んでいた南関東では珍しかった。関西に移住した頃、自転車のハンドルに傘を突き立てているおばちゃんたちと同様、あまりにありふれているので驚いたものだ。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

Dubrovnik 2

| | コメント(0) | トラックバック(1)

考えてみると、このドブロヴニクでは、いろいろな人々に出会っている。

数日たって、いかにもバックパッカーという出で立ちのオーストラリア人の若い男の二人組が宿の客に加わった。きっとまたおばちゃんがバスターミナルから引っ張ってきたのだろう。やがて僕が夕食をごちそうになっていることを彼らはかぎつけた。へんだなあ、どういうことだ? と問われて曖昧にごまかし、おばちゃんには、もう夕食はいいよ、と言った。子供たちは、えー、なんでー? と言っていたけれども、おばちゃんはほっとしたようだった。しかしこの二人とはまあまあ仲良くつきあって、一緒に旧市街を歩いたりもした。

旧市街は古い城壁に囲まれていて、車はいっさい入れない。城壁の入り口の一つ、ピレ門から、ルジャ広場まで二百メートルあまり、異様に広い目抜き通りのプラツァ通りがずどんと通っている。舗石は年月にみがかれて、つるつるに光っている。プラツァ通り以外の道は、すべてとても細い。

セミナーハウスには、他にもいくつかのグループが来ていた。フランクフルト大学からも社会学系の連中が一団体、やってきていた。その参加者の中に、パトリシアという女の子がいた。アルゼンチンからフランクフルトへの留学生。小柄で、黒い髪を長く伸ばし、眼のくりくりした、8分の1日系だという彼女は、ドイツ女ばかり見てきた眼にはとってもキュートに見えた。クロアチア語でお茶のことを「チャーイ」と言うということが、ことのほか嬉しいらしかった。ちょっと舌足らずな感じのドイツ語をしゃべり、僕の片言のスペイン語を笑っていた。一緒に町の回りの城壁の上をぐるぐる歩いたり、町の先端の水族館の脇にあった薄暗い食堂でパスタを食べたりした。でも、なぜだったかは忘れたが(たぶん実に些細な行き違いだったはずだ)、そのうちうまくいかなくなって、後半は全然顔を見なかった。いや、一度、ドイツ人学生らしい男と連れ立って歩いているのを見た。

ドブロヴニクの人々は、夕刻になるといっせいに外に出てくる。そしてさしたる距離でもない旧市街の目抜き通りの石畳の上ををひたすら行ったり来たり散歩し、あるいはまた戸外の席でチャーイを飲んだりするのだ。このいかにも南欧の、夕方の散歩の時間のざわめきには、独特の雰囲気がある。

われわれのセミナーには、もちろんベオグラードの哲学者もいた。初日、宿に戻るバスが分からず困っていた僕を助けて、町の人にバス停を尋ねてくれた。そのときの、セルビア人の彼とクロアチア人の地元の人間との間のやりとりに何か不穏なものがあったのを覚えている。クロアチア人は、ふつう、髭を伸ばさない。細面ながら黒々とした総ひげの彼は、見るからにセルビア人だった。残念ながら、当時、やりとりの言葉は分からなかったのだけれど、すでにセルビアとクロアチアのぎくしゃくした関係が影を落としていたのかもしれない、とあとになって思う。

フランスからフィリップ・フォルジェもセミナーに参加していた。ドイツ人よりも流暢なドイツ語をしゃべった。ドブロヴニクの沖合に、ロクルム Lokrum という島がある。さほど広くはないのだが、三カ所ほど浜があって、夏は海水浴客でにぎわうという。セミナー終了の前日、その島への遠足があった。二十人も乗ればいっぱいになってしまうような船が、町の波止場と島を結んでいた。島の野原には孔雀がいた。放し飼いの、と言うべきなのか野生の、と言うべきなのかは分からない。島の遊歩道を、フォルジェとおしゃべりをしながら散歩した。サングラスをかけて、饒舌な、気さくな優男。長年続いているこのセミナーの、次回のテーマの話。フォルジェは文学寄りに持っていきたいのだけれど、他の哲学者連中がいい顔をしないのだ、とか。次回はヘーゲルになりそうだ。ヘーゲルを文学として読んじゃえばいいじゃん、哲学だって文学でしょ、と言ったら、うん、その通り! と嬉しそうだった。(この数年後、日本からT. 高橋氏がフォルジェのところに勉強しにいったのではなかったかと思う。)

フォルジェと船着き場近くに戻ったところで、ウィーンから来た大学生の女の子に出会った。フランスに勉強に行きたいです、と言う彼女に、フォルジェは嬉々として連絡先を教えていた。そのあと、僕は彼女と話し込む。船着き場にはいくつものムラサキウニがへばりついていた。日本ではね、こいつを食べるんだよ、と説明しながら割ってみせると、全部オスだった。ちょうど、すでに満員の、前の船が出るところだった。屋根のないその船の中に、パトリシアの姿が見えた。連れらしい人物はおらず、一人で座っていた。じっと僕の方を見ていた。少しふくれ面になっているように思えた。

次の船で町に戻り、すでに夕刻の散歩に出てきていた人々の雑踏の中にパトリシアの姿を探したが、見つからなかった。同じセミナーの参加者で、カイザーズラウターンから来ていたでっぷりした哲学者に呼び止められて、ドブロヴニク最後の夕食を一緒に摂ることになった。

翌朝、ドブロヴニク郊外の空港から、往路とは違って一直線に、ドイツに戻った。連絡先も聞かなかったパトリシアには、それ以来再び会うことはなかった。あの船の中のふくれ面が最後。今頃、どこでどうしているだろうか。

あのセミナーにも(すくなくとも何年か続いていたはずだが)、その後、参加していない。すでにジーモン先生も退官されてしまった。

あの民宿のこどもたちだって、その後いわゆる多感な時期にいわゆる内戦があったことになるわけで、そして無事であればもうとうに成人しているはずで、どうしているだろうか。

あのベオグラードの髭の哲学者も、この十年を生き延びて、ようやく新たな歩みを踏み出しつつあるあの国で、元気だろうか。

筆無精な僕には、すべて、分からない。民宿のおばちゃんも、オーストラリアの放浪者たちも、みんな、それぞれに、しっかり生きていてくれればいいなと思う。

# なんだか紅茶とマドレーヌのかわりにアスパラガスから始まる〈失われた時を求めて〉になってしまった…。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

庭のないアパート暮らしだと、ついこんなものに手を出す。
spargel.jpg
近くの「ホームセンター」で購入。紙箱をあけると、ポリ袋の中に土が入っていて、そこに直接水をやっておくと、アスパラガスが伸びてくる。パッケージ写真のような立派なのはもちろん出てこない(世話の仕方が悪かっただけ?)。鉛筆、いや、箸ほどの太さのものが数本収穫できただけ。

...いや、野生のアスパラガスだと思えばいいのだ。

1989年の春にドブロヴニク Dubrovnik (ユーゴスラヴィア。いまのクロアチア)の民宿に泊まったとき、宿のこどもと裏山に野生のアスパラガスを採りにいった。
dubrovnik.jpg

ボンの大学にいたときのことで、大学の哲学の先生、ヨーゼフ・ジーモンが主催するニーチェをテーマにしたセミナーが一週間、ドブロヴニクであって、それに参加した。ドブロヴニクは「アドリア海の真珠」。まわりをぐるりと取り囲む城壁とともに、古い町並みがそっくり残っている。
Dubrovnik Online, Travel Guide for Dubrovnik and Dubrovnik Region
Grad Dubrovnik - City of Dubrovnik
歴史的な参考書には、バリシァ・クレキッチ 田中 一生(訳)『中世都市ドゥブロヴニク』がある。

観光案内的・旅行記的な情報は、日本語でもすでにネット上にふんだんに見つかるはずだ。上の Dubrovnik Online には美しい写真集もある。旧市街の外には当時すでにリゾートホテルもあった。そのころはまだユーゴスラヴィア解体前。紙幣にはティトーの肖像があった。ドブロヴニクの町の外、小さな岬の上に、セミナーハウスがあって、当時のユーゴはそういうところに安い価格で国際セミナーを一生懸命誘致していたのだと推測する。

僕にとって初めての「東欧」だった。ボンから寝台列車でウィーンへ。数日いて、リュブリャーナに移動して二三泊し(これが僕にとって本当に初めてのスロヴェニアだった)、そこからまた寝台列車でアドリア海岸に出て、それからきらきら光るアドリア海岸沿いにバスでドブロヴニクまで行った。旧市街のすぐ外のバスターミナルで降りると、民宿の客引きにきているおばさんたちが何人もいた。ルーム、ルーム、ツィメル、ツィメル...。ツィメルというのはドイツ語の Zimmer のことだった。

そういうおばさんの一人につかまって、セミナーハウスにも宿泊施設があることは分かっていたのだけれど、これも面白いか、と泊まることを承知した。客引きに一生懸命だったのだろう、(本来付かない)夕食も食べさせる、とおばさんは約束した。まあ、一二泊してみて、気に入らなかったら途中で出るよ、と言ってオーケーした。僕はクロアチア語はからきしだったから、片言のドイツ語や英語の会話だったはずだ。

おばさんの家は、ドブロヴニクの旧市街からはちょっと離れたところ、バスで数分、それからさらに坂道を上ったところにあった。
男の子が二人いた。立ち入って尋ねたりはしなかったが、亭主の姿は見かけなかった。おばさんは、ちょっと疲れた、キッチンドリンカーのような気配があった。上の子は、中学二年生ぐらい。とてもしっかりしていて、習い始めたばかりの英語をけっこう上手に使いこなし、通訳の役を果たしてくれた。最初、他に客はおらず、夕食はこの家族と一緒に摂った。海辺の町、魚介類がおいしかった。料理にはたいていオリーブオイルをふんだんに使った。

時間のあいていた午後、この上の息子と裏山に野生のアスパラガスを採りにいった。石灰岩の岩がごろごろしていて、わずかに木が生え、下薮の生い茂った道らしい道もない斜面に入っていって、探す。アスパラはやはり細いもので、ひょろひょうろと一本ずつ伸びている。子供は薮の中に次々に見つけて摘んでいく。そのうち僕も慣れてきて、見つけられるようになった。「この人すごいよ、すぐに見分けられるようになったよ」と、帰ってから、子供は母親に報告していた。これもオリーブオイルで炒めて、みんなで食べた。(たぶん続く)

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

なるほど、これがコメントスパムなのか。妙なところに英文のコメント。ブログを褒める、無内容でごく一般的な文句。毎回異なった怪しげなリンク(この宣伝がポイントなんだろうね。今度はオンラインカジノだと)。毎回異なった IP アドレス(アドレスで排除されることを避けている?)。そしてしかし毎回同じメールアドレス(これはブログには表示されない)。しばらく晒しておいて、削除することにしよう。

まっとうなコメントをいただくのは嬉しいけれど、もしこういうのが増えるようなら、TypePad認証とか、掲載前の承認とかを使わなければならなくなるなあ。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

これも Mac4Ever 経由で知ったのだが、Flip4Mac なるメーカーが、Mac 用に一連の Windows Media ファイルの閲覧/編集ソフトを出した。
wmv.png
Flip4Mac - Digital Media Tools for the Mac

WMV Player ($9.99)/WMV Player Pro ($49.00)
WMV Studio ($99.00)/WMV Studio Pro ($179.00)
の4種類。

Player のほうだけ試してみた。

WMV Player は QuickTime の中で WM ファイルを見ることができるようにするソフト。したがって独立したプレイヤーアプリではない。インストールするとシステム環境設定に「WMV Player」という項目が増え、そこで設定ができるようになっている。いつものQuickTimeの操作性で WM ファイルを見ることができるということだ。Windows Media Player のあのいかんともしがたいデザインを見ないで済むだけでも 9.99 ドルの価値はあるのかもしれない。...と思ったけれど、結局新しめの WM ファイルだと開けないケースが多いみたいだ。

# もちろん、WM ファイルを見るだけなら、VLC という、以前からよく知られた無料の選択肢のほうを好む人も多いだろう。

Pro 版は、QuickTime ベースのソフトで WM ファイルを読み込んで編集し、QuickTime がサポートするフォーマットに書き出すことが可能。
Studio のほうは、大雑把に言えば、これに、WM ファイルを編集して書き出す機能が加わる。

試用期間中は、WMファイルの前半しか再生されない。
WMV Player は独自のプラグインをインストールし、Safari 上でも QuickTime のフレームワークによって WM ファイルが再生できるようにする。Microsoft Windows Media Player のプラグインがすでにインストールされている場合、Flip4Mac WMV Player のインストーラーは、それを
/Library/Internet Plug-ins/Disabled Plug-ins
に移動する。

...でも最近はWMファイルを開かなければというような必要にせまられることは(幸い)あまりないなあ。

# 別に毎日更新しなければならないわけでもないけれど、Mac ネタだとエントリの材料に事欠かない。安易と言えば安易だ...。そろそろ German Cinema カテゴリや Musik カテゴリも復活させなくては。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

L'actu par Mac4Ever に、10.3.9 にしたら少し古い PowerBook (挙げられているのは 15' 1.5GHz)でも二本指トラックパッドスクロールができるようになった、という記事があった。該当機種では、システム環境設定の「キーボードとマウス」の「トラックパッド」ペインに、二本指スクロールに関する項目が増えるようだ。
残念ながら僕の PB 12' 867MHz では変化無し。

以前から二本指スクロールを実現してくれるiScroll2 というユーティリティがあるというので、落としてくる(バージョン0.19)。インストーラを走らせると、この機種では使えない、という表示が出てしまう。
インストーラ・パッケージの中の InstallationCheck スクリプトを見てみると、その最後の最後、"W Enhanced Trackpad" かどうかというチェックにひっかかっているらしい。このスクリプトからこの部分を削ってしまい、インストーラを走らせる。

インストールが無事終わり、再起動すると…トラックパッドが機能しなくなっていた。マウスを繋ぐと認識したので、あわてて iScroll2 のサイトからアンインストール用のシェルスクリプトを取ってきて、iScroll2 をはずす。

無事トラックパッドは復旧したけれど、二本指スクロールはこの機種ではやっぱりダメか…。トラックパッドのへりを使う SideTrack で満足するしかなさそうだ。こちらは有償だし、通常のトラックパッドとして使える領域が狭くなる(このデメリットがないのが二本指スクロールだ)。ただしスクロールの動き自体は滑らかで申し分ない。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

iWork '05 が届いた。入っている Pages も Keynote2 もいいのだけれど、気になったのはこれ。
iwork1.jpg
初回起動時にシリアル番号を入れさせる。

同時に届いた iLife '05 の方は、これとまた違っている。インストーラを起動すると、インストールに時間がかかるからその間にユーザー登録をせよ、というダイアログが出て、OK すると、Apple のユーザー登録サイトに連れて行かれるのだ。(OKしない選択肢もある。)

いずれにせよ、こういう振舞いは、他のメーカーのソフトでは当たり前だが、いままでの Apple 製ソフトにはなかったのではないか。インストールしたらそれだけで使い始められる、それが普通だった。ユーザに無用な枷をはめることを極力避けた iTunes + iPod で急激に業績を上げてきた Apple に、ここに来て何か迷いが出ているようだ。「登録」の形態がまちまちなことも、「迷い」を思わせる。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

cron

| | コメント(0) | トラックバック(0)

前に書いたように、Mac mini を使ったサーバ上で moodle を動かしてみている。

moodle をちゃんと動かすためには cron で定期的に一定の処理をさせなければいけない。
具体的には、moodle の中の cron.php ファイルを呼び出しさえすればいいのだが、それを一定間隔で自動的に行わせるために、moodle のマニュアルに従って、wget を使ったクローンジョブを設定していた。ところが、Mac OS X 10.3 にはデフォルトでは wget は入っていないのだった! 最初、cron のエラーをチェックしていなかったので、気づかなかった。cron は、「wget? そんなコマンドないよ」というエラーメッセージを5分ごとに吐き続けていたのだった。

あわてて、ここ
http://radio.javaranch.com/bear/2005/03/02/1109829480523.html
の記事を参考に wget をインストール。ようやくちゃんと動くようになった。wget 以外のコマンドを使う手もあったのかもしれないけれど、まあいいや。

ちなみに、cron を GUI で設定するには、Webmin を使ってもいいが、CronniX が比較的使いやすい。
cronnix.png

それにしても、自宅サーバの Mac mini、これ以外にもまだまだチューンナップも必要のようだ。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

vatican.jpg

ドイツの雑誌、GEO のサイトが、4月2日のヨハネ・パウロ二世の逝去で関心が高まっている(少なくともドイツ語圏で)のを受けて、「ローマ法王に関する知識テスト」を掲げている。(ドイツ語)
GEO.de - Wissenstest: Die Päpste
全15問。「ある法王はトリニタ・ディ・モンティ教会の前に座っていた足の悪い人に、イエスのように〈起ちてゆけ〉と言った。言われた人は信じて立ち上がろうとしたがコケてしまった。この逸話の法王はだれか」なんてのもある(知るか、そんなの)が、「法王はつねにローマにいたわけではない。14世紀にはどこにいたか」なんて易しいのもまじっている。3択で順次答えていくと、そのつど正誤と解説が表示され、最後にもう一度「復習」ができる。

日本語でも、
教皇(ローマ法王)を知ろう - [よくわかる政治]All About
の記事が基本をしっかりまとめてくれている。

上のGEOの問題、ドイツ人たちはどれぐらい正解できるのだろう? ドイツ人ったっていろいろいるけれど。

そう言えば、十年前、ドイツのおばちゃんが、「イスラムってカトリックだったかしら、プロテスタントだったかしら」とのたまっていた、と知人から聞いた。アメリカがイラクを敵に選んで以来、さすがにもうそこまでの Ignoranten はいなさそうだが。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

Shim-K さんの「菜の花のおひたし」に反応して:

capsella.jpg
そろそろ時季は終わりだけれど、ナズナの花のおひたしが美味い。白い花穂の部分だけを摘んで、茹でるというよりさっと湯がいて、芥子醤油で和える。菜の花をずっと柔らかくしたような味わい。ナズナというかぺんぺん草の花を摘んでいる人など他に見たことがないから、案外知られていないのではないか。
もちろん、七草の一つなのだから、根元の方からまるごと茹でてもいいのだが、花のところだけをさっと湯に通すのが、またいいのだ。

これは、この本に教わった。

野草の料理
甘糟 幸子


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

現在はこの単行本でしか手に入らないようだが、手元にあるのは1981年の中公文庫版。扉に著者から僕の母あての献辞が1983年8月という日付とともに書かれている。著者には僕は面識はないし、母は直後に50歳少しで亡くなっているから、どういう知り合いだったのか、どういう機会にいただいたのかも分からない。
もともと野を歩くのは好きだけれど、この本のおかげで、四季折々、さらに楽しみが加わっている。

# またカテゴリが増えてしまった...。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

奇妙なことに、Versiontracker が Mac OS X 10.4 のリリース情報を載せていた。4月29日とか。
Apple Mac OS X 10.4 - VersionTracker:

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

iCalc

| | コメント(0) | トラックバック(0)

MacTechNews.de - News Tag und Nacht
に出ている噂によると、Apple が iCalc なるソフトを出してくる可能性が強まっている。iCalc の名を商標登録したというのがその「証拠」。

iCalc とは何か? 開発者向けに配布されているTigerのプレバージョンには数式をグラフィカルに表示するソフトが付いている。これが iCalc と改名される可能性もあるが、さらに可能性が高いのは、iWork のパッケージに含められることになる表計算ソフトだろうという。iWork は AppleWorks に置き換わるべきソフトだが、これまでのところワープロ Pages とプレゼンソフト Keynote しか含まれておらず、表計算が欠けている。この穴を埋めるのが iCalc だろうというのだ。

iCalc がいつ現れるのかもさまざまな憶測がある。最も早くて6月6日のWWDC、一番可能性が高いのは、2006年1月の Mac World San Francisco だという。

    
  • Google Bookmarks
  • Yahoo!ブックマーク
  • はてなブックマーク
  • del.icio.us
  • livedoor クリップ
  • POOKMARK Airlines
  • ニフティクリップ
  • Buzzurl
  • newsing it!

tanzen.png

ボン大学のオーケストラにいたとき。あの事務局の奥の練習場で打ち上げをやった。
やがて、だれかがラジカセで音楽を流して、ダンスが始まった。けっこう踊れる学生が多い。僕は見ているしかなくて、少し口惜しかった。彼らが踊れるのは、習ったから。

ここでダンスというのは、いわゆる社交ダンスの類い。

- ラテン系の人々は人間ってのは生まれつき踊れるものだ、ダンスなんて習うものではない、と確信していて、実際踊れる。(以前に紹介したアキン監督の映画『ソリーノ』の末尾で、白血病のはずの母親が息子の結婚式で楽しげに踊るシーンなども印象的だった。)
- ドイツ人はダンスは習うものだと思っていて、子供の頃、ダンス教室に通わされるから踊れる。
- 日本人はダンス教室に行かなければ踊れないと思っていて、かつ普通は習いにいかない。従って踊れない。

例によってこの手の一般化というのはおもしろがるためにある。認識のためではなくて娯楽のため。だから、あまり信じ込みすぎないように気をつけなければいけないけれども、ドイツの町ではよくダンス教室の看板を見かけるし(Web 上でも 'Tanzschule' で検索をかけるとごまんと出てくる)、ドイツ人が子供の頃ダンス教室に行かされるというのは大方事実のようだ。

ドイツ語の Podcasting、Schlaflos in Münchenが、先日(4月1日)、その